★[演劇]アナコイ

舞台

2004年、初めて観た演劇。ダムダム弾団、アナコイの感想です。

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紹介

疾走する複雑な劇構造で『混沌の中で生きるバカ』を描く劇団《ダムダム弾団》の新作。
メタセックスが流行した都市を舞台に、現代のロミオとジュリエット像を描き出す。
公演日 / 2004年07月22日 ~ 25日(計7回公演)
会場 / 中野劇場MOMO
上映時間 / 1h30ほど

<パンフレットより転用>(一部伏せ字)
架空の未来都市、セントリフュージ(Centrifuge=遠心分離器)。
この街では古来より、二つの対立する部族が争いを続けていた。しかしある時、恋に落ちたそれぞれの部族の若い男女、すなわちロミオとジュリエットが物語の末、非業の死を遂げた。それによって二つの部族は争いをやめ、統合して世界は一つとなり、そして街は繁栄を極めた。
ところが、世界統一で名声を挙げたロレンス修道士は、部族間の争いを戒めるため、極端な禁欲を説く新しい宗教を新興する。そこでは人種のボーダーレス化が唱えられ、無作為に血縁関係を広げる生殖行為を自粛するよう教えが説かれた。また、科学の発展いより、精子と卵子の科学精製が可能になった事も手伝って、人々の天然生殖による出生率は急激に減少していった。ただ、宗教の教義なんてのは中途半端に浸透するもので、禁欲はいつのまにかトレンドと化し、街の人々の間ではチ*ポとマ*コを使わない「メタセックス」が流行していった。セックスはいつの時代も消えることはない?
そんな中、純愛を貫き通して死んでいったジュリエットが、遺伝子操作で不感症になって生き返った・・・。

感想

◆ 私は美登利

演劇を見るのは初めてといっていい位。高円寺と中野を間違えるというドタバタの中、着いたMOMO(中野劇場MOMO)。駅から結構離れた場所にあります。随分と奇麗な小屋((げきじょう)。演劇ってこうゆうところでやるんだ。

既に開演10分後、案内の人に連れられ2階へ。ドアの前で注意が。中に入っても、カーテンを開けないように。確かにドアの中にはレントゲン室を思わせる厚いカーテン。開演しているので光が漏れないようにとの配慮のようです。

案内の人は空いてる席を探しに行きました。ドアと暗幕に挟まれて息苦しい。出待ちの役者のような緊張を覚えるのは、すぐそこに役者(ひと)の声が聞こえてるからです。・・・中へ。

◆ 整頓されたアングラ

舞台では激しい音楽の中、踊る6人の男女。何よりの驚きは舞台までの近さ、役者が実物大に見えます。マイクなど不要。それにしても小さな舞台、ぶつからないように踊るのも大変そう。小さな女性が出てきて解説を始めました。カツゼツの良さ、間の取り方の巧さ。よかった、まだ始まったばかりのようだ。

物語は結構複雑、途中に何度もコントが入って来ます。どの役者も演技に迫力があり、レベルが高い。もっと自己主張だけのアナーキーなものを想像していたので嬉しい誤算でした。
 
◆ これが演劇的手法!?

物語も面白かったですが、今回は演劇的な手法に感動しました。他のメディアにはない独特の演出です。
まず真っ暗になる舞台+開場。映画館なんかのそれと違い、本当に完全な暗闇。突然くるので不安感が増し、長く続くと上と下がわからなくなる程の暗さです。

それから舞台上での同時進行。映画やテレビドラマでは複数のストーリーが同時進行することがあります。一方の進行が盛り上がったところで、カメラが切り替わって別の進行…という編集。それをこの小さな舞台でやれるなんて!ポイントはスポットライト。進行中物語を演じる役者達にはライト、他は動かずにいて、目立たないようにしている。たったそれだけでこれを行います。

最後は役者が一斉にこちらを見て語る台詞。主人公が観客の正面に対峙し、訴え始めると舞台上の役者が徐々に同様にこちらを向きます。舞台一体となって語られる台詞。原作者/脚本家が言いたい作品のテーマのようなもの?説得力があります。

◆ 事情通の解説

でも自らも舞台に立つM(主演:小柳ふようさんの友人)に言わせると、これらはごく普通の演出。手法のABCらしい。この公演はたったの7回なのも、小劇団では多い方らしいし、方々の劇団からの客演やフリーの出演、これも当たり前だとか。

演劇って随分昔に読んだ《ガラスの仮面》の印象しかないので仕方ないけど…。興味深い。そろそろ寺山修司って人を調べてみようかな。

(2004/09/20)

  

キャスト

テッペン(性器のない男・人工心臓栽培人)/ 石井壮太郎
あやめ(カプレカ部族)/ 小柳ふよう
ロミヲ(モンタ部族)/ 芳賀晶(カノン工務店)
ライヒ(医者)/ 道井良樹(電動夏子安置システム)
ユニ(両性具有)/ 長谷川有希子(Reset-N)
パン助(患者)/ 藤島陸八
バツニ(患者)/ 森井陽子
ミライ(孤児・モンタ族)/ 志賀聖子
ブルーダイヤ(弁護士)/ 西尾友樹(quad banded)
ロレンス司教(カプレカ部族)/ 三原太一(はらぺこペンギン)
タナトス(ハンター・カプレカ部族)/ 江戸川卍丸(劇団上田)
ミラクルな女(死神)/ 新野彩子
でもない男(死神)/ 青山隆之

スタッフ

作・脚本:藤森俊介
音楽:山下菜美子

 


2稿:2021年07月21日、テレビの悪足掻き
初出:2019年08月28日、東京つまみ食い