★[バレエ]マシュー・ボーンのくるみ割り人形
【発掘】2004年 五反田の簡易保険ホールで観たバレエの感想です。
紹介
斬新な解釈で古典バレエの名作を蘇らせる演出/振付家、マシュー・ボーン。
男ばかりの《 白鳥の湖 》で、イギリス人として初めてトニー賞の最優秀演出賞と振付賞を受賞。
2003年よりスタートさせたプロジェクト、ニュー・アドベンチャーズの第2作目の舞台が《 くるみ割り人形 》。
東京国際フォーラムの公演が好評、急遽簡易保険ホールで追加公演。
アダム・クーパーの出演はなし。
クリスマス。ドロス博士夫婦が牛耳(ぎゅうじ)る孤児院、二人の子供、シュガーとフリッツも我が物顔です。視察のお役人からのプレゼント、クララが手にしたくるみ割り人形も取り上げてしまいます。
その日の夜。人形の戸棚に手を延ばすシュガー、そこに現れたのは等身大の人形。孤児院は大騒ぎ。孤児たちは人形が自分たちを助け出そうとしてるのに気が付き、反乱を起こします。そして人形はクララを連れて孤児院の外へ・・・。
公演 / 2004-04-24 13:00~
場所 / 簡易保険ホール
料金 / S席12,000円、A席9,000円、B席7,000円
感想
これがバレエというものか
生の舞台の緊張感!その凄さ、素晴らしさに感動しました!! 見たのはバレエ、マシュー・ボーンの《 くるみ割り人形 》。斬新な演出と言われる通り、大胆なバレエにOh!(感嘆符)の連続でした。
映画とは違う会場の雰囲気と合わせて、書きたいこと満載の2時間弱でした。
最初のOh!
昴(すばる/曽田正人)を読んでから興味を持ったバレエ。(「もう今日こそダメかもしれない・・・」あの猫のおどり、第1巻は涙なくして読めません(涙))。と言う訳で久しぶりの舞台見物はバレエという事に。バレエは初めてなので、奮発してS席を取りました。会場は五反田のゆうぽうと簡易保険ホールです。
開場時間から暫く経ったロビーは、グッツや次回公演のチケット販売でごった返し状態。人混みをかき分け、ホール入り口へ向かいました。扉の向こうに上り階段があり、その先に幕が見えます。そこに浮かぶように《 Nutcracker! 》の文字、これがまず最初のOh! これだけで幻想的な雰囲気満点です。
ホールを見渡すとさすがバレエの殿堂と言われる簡易保険ホール。見上げる程高い天井、見晴らしの良い広い舞台。ここでもう嬉しくなってしまいました。
2番目のOh!
席は1階10列目のほぼ右端。まぁ、こんなものかな。観客を見て見るとちょっと年齢は高め。お粧(めか)しした子供も多く来ています(そうか子供向けなのか?)。OL風の若い女性もチラホラ。
ただちょっと煩(うるさ)い。ざわついてます。追加公演ってこんなものでしょうか? 後ろのおばちゃんなどは「な~んにも知らないで着ちゃったわ」と、会場が暗くなってもしゃべってます。高価な席なのにご亭主は泣いているのでは?
幕の前にひとりふたり、孤児院の服でダンサー達が現れました。客席の方を見て、ワクワクしたり、恥ずかしがったり。それぞれのキャラクターが出ています。でもみんな無言。舞台いっぱいに並んだなぁと思ったら、一斉に後ろを向いて幕を引き落としました。これには客席全体が「わぁ」と驚きの声。これが2番目のOh! になりました。孤児院の舞台が現れます。
3番目のOh!
寒々とした孤児院の一室。マトロン(経営者夫人)が孤児達に掃除をさせています。これから役人の視察があるという設定。経営者夫妻、その子供とも意地悪で、孤児達は迫害を受けています。少しコミカルにその当たりの説明。普通のくるみ割り人形では、お金持ちのクリスマスパーティが舞台らしいですが、この辺がマシュー・ボーンということでしょうか?
クリスマスツリーは枯れ木。左右の壁は舞台中央に向かって傾(かし)いでいます。子供の視線? 天井が高く見えます。舞台から聞こえる足音、靴の鳴る音。生でしか聞けない舞台の音です。
役人の前でいくつかの踊り、ダンベルを持った踊りが気に入りました。人形を喜ぶクララの1人踊りもうまい。
役人たちが帰った夜、舞台が一変します。シュガーが鍵のかかった戸棚を開ると、そこに等身大になったくるみ割り人形が。この場面が本当に吃驚。ネジの緩んだロボットのように動いたかと思うと次は暴れ出します。
怯(おび)える孤児達、左右の壁には罅(ひび)が入り、轟(とどろ)く雷鳴の中、正面の壁は二つに割れます。ここが3番目のOh!。観客全員が吸い込まれるように舞台に注目、その様が肌で感じ取れます。凄い迫力!
4番目のOh!
孤児達の反乱でみんなが自由に。割れた壁が別な世界への扉に。
クララの元に現れる人形。実は彼の正体はクララの憧れのフィルバート。ここからクララとフィルバートのパ・ド・ドゥ(2人の踊り)が始まります。この踊りが4番目のOh!
よくバレエでは男性が女性の腰を掴み持ち上げ(リフト)ます。なんであんなことをするのか、よく分かりませんでしたが本物を見て納得。まるで女性が男性の回りを飛んでいるように見えます。このスムーズさはワイヤーアクションにも見習ってほしいところ。
この時のフィルバートは上半身裸に白サスペンダーという姿。マッチョダンサーズも現れてポーズをとるという謎の世界が展開。でもクララってまだ11歳の少女では・・・。
(^^;
その後は凍った湖が舞台。宙に大きな羽根が一枚、吊るされています。
スモークの焚かれた舞台で、連なって踊る姿は当(まさ)にスケート。体を伸ばした状態で少しづつ角度が変わっていく様子や、スカートの端を摘んでヒラヒラさせる動作が面白い。最後には雪まで降ってきました。
しかしここでフィルバートはプリンセス・シュガーに誘惑され、ともにどこかに行ってしまいます。途方に暮れるクララというところで第1部が終了しました。
ちょっと中休み
20分間の休憩の後、第2部開始。
クララの願いを聞いて、2人の天使が現れます。青の縦縞ストライプのパジャマ。背中の羽根と金髪の子供カツラで、なんとか天使と認識しました。クララは鳥が運んで来た水玉のワンピースに着替えて(実際は小鳥の縫いぐるみの付いたハンガーが、糸で吊るされて降りて来て、また上っていった)天使たちとフィルバートの後を追います。
灰色の孤児院から、白の凍った湖へ。舞台はどんどんカラフルになっていきます。今度は巨大な真っ赤な唇の門。まるでローリング・ストーンズ!! お菓子の国の設定だそうです。
プリンセス・シュガーとフィルバートのパ・ド・ドゥ。踊った後を肩を寄せ指をなめ合ってます。むむ。プリンセスがシャーベット王とキャンディ王妃にフィルバートを恋人として紹介。王、王妃とも気に入り、連れだって中へ。
やがて門には衛兵が立ち、入城者をチェック。なにやらパーティが開かれる模様です。サングラスに大きく広がったヅンドウ衣装の衛兵、でかい!こちらは白と黒の太いストライプ柄。招待状のないクララは中に入れてもらえません。
後で気が付きましたが、キャストはほとんどが二役。孤児院の経営者は今度は王と王妃に。孤児達もお菓子になって、次々に個性的な踊りが続きます。
5番目のOh!
ここで《 スペインの踊り 》。二人のセニョール(闘牛士のよう)に挟まれて、セニョリータ(カルメンのよう)が登場。見せびらかすように招待状を振っています。スペインだからカルメン?・・・分かりやす過ぎる。役名はリコリス。薬用キャンディの事だそうです。真似て裾をつかんで踊るクララがかわいい。リコリスは中へ、クララは入れません。
次は《 アラビアの踊り 》。たぁ~ぁら、たぁ~ぁら、たっ、たらららら~。一際個性的な曲に合わせて、ニッカポッカーが登場。ホイップクリームを頭に被り、口ひげにタバコ、真っ赤なジャケットは襟だけ白です。曲に合わせてのグニャグニャ踊り。一体重心はどこにあるのか? 場内はくすくす、笑っちゃうダンスですが、実際に踊るのは大変そう。場内まで届いた煙草の匂いが5番目のOh!でした。
6番目のOh!
《 中国の踊り 》。タララララぁ~タッタタータタッターリラリリ。フルートの軽快なリズムで登場したのはマシュマロ5人娘。ピンクのボンボンを頭と腰に。それしか付けてないような大胆な衣装です。伸びる長い脚がSo Cute。ちょこちょこ歩く姿にわぁという歓声。お父さんも大喜びという6番目のOh!でした。5人に紛れて忍び込もうとしたクララですが、衛兵の目はごまかせませんでした。
続いて有名な《 トイパーク 》。赤・青・黄色、なんと3人の暴走族が登場。胸とヘルメットにそれぞれの色の3重丸の柄。拳を振り上げて踊ります。役名はゴブストッパー、渦巻き柄のキャンディーだそうです。衛兵と揉めてるスキをついて、クララは城の中へと入ります。
城の中では《 葦笛の踊り 》。タカタカタッタ、タッタララララ~プリンセス・シュガーをマシュマロガールズが囲みます。距離が離れていないのに、6人が複雑にからむ踊り。小節の切れ目切れ目でピタッと止り、ポーズ。まるでパズルか万華鏡です。調が変わったところで、クララと天使が忍び足で通り過ぎます。
7番目のOh!
そして《 花のワルツ 》。これは見た途端にOh! の七つめ。舞台には大きなウエディングケーキ。お菓子たちが各段に陣取り、踊ってます。それに私の席は端っこなので、ケーキが2/3しか見えない!これなら2階席の方がいいぞぉ~。
(x_x)
ケーキの頂上に新郎、新婦の人形。これは結婚式のようです。秋のワルツ(調の変わる数小節を私はそう呼んでいる)では、どう踊りが変わるか楽しみでしたが、何もありませんでした。
終幕、そしてアンコール
ケーキがなくなると、バラに模られたハートが降りてきました。シュガーとフィルバートのグラン・パ・ド・ドゥ《 金平糖の踊り 》。やるぞと思ってたら、本当にハートを潜り抜けました。後半、クララとプリンセス・ボンボンが加わり、パ・ド・カトル。一瞬、シュガーとクララが接近遭遇、目から火花が散ります。結局、フィルバートと結ばれたのはシュガー。一瞬クララを思いやるシュガー。そして、ニヤッと笑うシュガー。
ふと気が付くとクララは元の孤児院の中。呆然と悲しみにくれるクララ。そこに本物のフィルバートが現れ、クララの手を取り外へ。というフィナーレでした。
場内はまさに割れんばかりの拍手。立ち上がっている人も多いです。次から次へお菓子たちの挨拶、中に日本人がいたのも驚き。そしてアンコール、またアンコール。暗転と挨拶のタイミングがズレて、みんながドカドカ移動中に明かりが点いて大慌てなんて演出も。笑えました。
最後のOh!
そして最後のOh! それは後ろで見てた女の子(小3くらい)の感想です。
「これじゃ普通の芝居みたい、バレエじゃない」
え~っ。これってバレエじゃないの? せっかく初めてバレエをみたと思ったのに!? マシューボーンって、イギリスの猿之助? これはスーパー歌舞伎みたいなものなのだろうか。
(^^;
ロビーでDVDを購入。イギリスでの公演も見ました。でも比べ物にならず、やはりあの感動は生の舞台が生むものの様です。
キャスト
[ 主役 ]
クララ(孤児)/ シェルビー・ウィリアムズ
フィルバート(孤児、クララの憧れの人)、くるみ割り人形 / ジェームズ・リース
[ 孤児院 ]
シュガー(孤児院経営者の子)、プリンセス・シュガー / アンジャリ・メーラ
フリッツ(経営者の子)、プリンス・ボンボン / ニール・ペンリントン
マトロン(経営者夫人)、キャンディ王妃 / アナベル・ダリング
ドロス博士(経営者)、シャーベット王 / ダレン・フォースロップ
[ キューピッド ]
エニド(孤児)、キューピッド1 / 友谷真実
エドウィン(孤児)、キューピッド2 / リー・スマイクル
[ ニッカポッカー ]
ニコラス(孤児)、ニッカボッカー / ロス・カーペンター
※ニッカポッカー=アイスクリームサンデー
※アラビア(コーヒー)の踊り
[ リコリス ]
ルビー(孤児)、リコリスレディ / ケリー・ビギン
チャーリー(孤児)、リコリスマン1 / ジョー・コラサンティ
ヴィク(孤児)、リコリスマン2 / アシュレイ・ベイン
※リコリス=薬用キャンディ
※スペインの踊り
[ ゴブストッパー ]
ジャック(孤児)、ゴブストッパー1 / サミュエル・プラント
ボブ(孤児)、ゴブストッパー2 / スチュアート・ロジャース
リトル・ウィリー(孤児)、ゴブストッパー3 / グレン・グラハム
※ゴブストッパー=渦巻き模様のキャンディ
※トレパーク(ロシアの踊り)
[ マシュマロ ]
ロッテ(孤児)、マシュマロ1 / 谷古宇千尋
ティリー(孤児)、マシュマロ2 / ソフィア・ハードレー
ジョージ(孤児)、マシュマロ3 / ハンナ・ヴァッサロ
コルディー(孤児)、マシュマロ4 / ミカ・スマイリー
クレミー(孤児)、マシュマロ5 / アニエス・ヴァンドルポウト
※中国(お茶)の踊り
※あし笛の踊り
[ 役人 ]
役人1、アメリア・プーク / レイチェル・ランカスター
役人2、ハリエット・ハンバグ / レイチェル・モロウ
役人3、パーシヴァル・プーク / ニール・ウェストモ―ランド
役人4、ハロルド・ハンバグ / アダム・ガルブレイス
本編を見るには・・・
映像配信・メディア販売はありません
[ 私の持っていたDVDのチャプターリスト ]
<Act1>
序章
パーティの準備
クリスマス・パーティとプレゼント
就寝の時間
反乱
凍った湖
<Act2>
お菓子の国への道
ご招待客のみ
結婚式