原題 Spellbound
惹句 知性から官能美へ 目もくらむ愛に包まれてバーグマンが変わる!
監督 アルフレッド・ヒッチコック
女優 イングリッド・バーグマン
俳優 グレゴリー・ペック
俳優 レオ・G・キャロル
女優 ロンダ・フレミング
ヒッチコック カメラで遊ぶ。サルバトール・ダリ協力、白い恐怖 の感想です。
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作品紹介
1945年公開、アルフレッド・ヒッチコック監督のスリラー。出演 イングリッド・バーグマン、グレゴリー・ペック、レオ・G・キャロル。
アメリカ、バーモント州にある精神病院。新しい医院長に、エドワーズ博士(グレゴリー・ペック)が着任する。恋愛には興味がなく、教科書みたいな女と呼ばれていた精神分析医のコンスタンス(イングリッド・バーグマン)は、博士を一目見て恋に落ちます。しかし、エドワーズは不審な行動をとりはじめ、特に白地に縞の模様を見ると、錯乱状態になるのでした。
第二次世界大戦中の制作。突然の精神分析医ものなのは、プロデューサー、セルズニックのゴリ押しだったとの話も。作品は現在、パブリックドメイン扱い。
感想
アスペクト比がスタンダード(1.33:1)のせいでしょうか、テレビドラマでもみてるかのよう。気軽に観賞できました。
特に二人が真実を求め、ガブリエルバレーに行き、スキーをするシーン。クラシカルな合成(スクリーンプロセス)で和(なご)みます。第二次世界大戦中の制作だからなぁ。
(-_-;)
ヒッチコックらしいカメラワークがいくつか。
1つ目はエドワースとコンスタンスのキスシーン、その間のイメージ。部屋の正面にある扉開くと、奥に扉。その扉が開くと、さらに奥に扉。その扉が開くと・・・と続きます。コンスタンスの心の開放を表しているのだと思いますが、きっと遊んでるな、監督は。
(^_^;)
それにしても、美男美女は恋に落ちるのが早い。
2つ目はJ.B(この時点では、彼はエドワードではないことがわかり、ただの記憶をなくした男。イニシャルのみ判明)が飲むミルク。
逃避行中の二人は、コンスタンスの恩師を頼り、ロチェスターへ。二人を見て、すべてを理解する恩師、ブルロフ博士。
コンスタンスが眠った後、剃刀を手に階段を降りてきたJ.Bに、博士はミルクを飲ませます。
この時のカメラ。まるでJ.Bの鼻の頭にカメラが付けたよう。コップがスクリーンいっぱいに、かぶさってきます。お、お、お、溺れる~。何事が起きたのかと思いました。
( ゚Д゚)
そして、3つ目はラスト直前のあれ。こちらはワンシーン(後述)の方に書きました。
今は何でもCG。驚かすのは編集の仕事。でも、この時代はメカニックが主役、大道具の仕事だったもよう。でっかいガラスのコップを作ったんだろうなぁ。これを面白いと思える人は幸せ者のひとり、ヒッチコック作品をお勧めします。
B.Jは誰なのか? コンスタンスは彼の見た夢を書き留め、ブルロフ博士と分析します。
夢の中の映像はサンバトーレ・ダリが協力したとのこと。・・・って、ダリって歴史上の人物ではなかったのか。意外に身近な人だったのに吃驚。夢の内容はこうです。
どこかのクラブ。カーテンに張り付いた大きな眼、眼、眼。肌を露わにした女がやってきてみんなにキス。長いテーブルで、髭の男とブラックジャック。男は勝ったというが、裏返したカードは真っ白。顔のない店の人が来て、今度イカサマしたら殺すと言う、鋭角的な屋根の斜面、・・・。
この夢分析が重要で、ラストにつながります。でも、それだけでは説得力がないのではとの配慮からか、コンスタンスの台詞を多く入れ、論理武装してます。そつがないなあ。
序盤に出てくる患者のメアリーとガームズ。最後に出て来て実はと言うオチを想像しましたが、全くの当て馬。精神病の説明用のキャラだったのね。でも、もう一人は・・・。観終わると、バランスよく、まとまってるなぁという気になります。
結局3回ほど観ましたが、2回目め以降は再生時間が半分くらいに感じました。夢中の方が時間が長い、不思議だ。
2回目以降はストーリーがわかっているので余裕があるからかなぁ。テルミンで奏でられるテーマにも気をまわすことができました。
終わり
ワンシーン
すべての謎が解けた、これでハッピーエンドと思ったラスト10分前。エドワード(本物)の死体が見つかります。その背中に弾丸があったことから、殺人犯として投獄されるジョン・バランタイン(J.B.のフルネーム)。訴えも聞き入れられず、悲観にくれるコンスタンス。しかし、ある一言から真犯人に気づき、本人に詰め寄ります。強い。
犯人は犯行を認めますが、ひとりでやって来たコンスタンスを嘲り、銃口を彼女に向けます。この後のシーンが忘れられません。
観客は犯人目線。スクリーンの中央下にリボルバーがあり、コンスタンスに狙いをつけています。警察に電話すると言い、ドアに向かうコンスタンス。カメラもともにパーンし、狙いを1ミリも外しません。ちょっと人差し指に力を入れさえすれば・・・。ドキドキドキ。
コンスタンスが出て行き、ドアが閉まります。銃は横を向き、なにか考えていましたが、やがてその銃口がこちらを向き、銃声が響きます。真犯人は自殺したのでした。・・・面白すぎる。
今回、Amazonプレミアムの吹き替え版を観たのですが、最期の銃声にあわせて、スクリーンが赤くなりました。これが貴重な赤バージョンか。
黒沢明の天国と地獄(1963年)の煙突の煙が有名ですが、これが元祖だったのかな。
セリフ ~ 恋に落ちたコンスタンス
※ 恋は盲目。冷静なコンスタンスが、恋に落て発した矛盾した発言集。
時々精神状態が不安定になりますけど、彼は危険な人間なんかじゃありません。
先生の方が経験豊富ですが、この場合は・・・。
悪い人間にこんな気持ちになるはずありません。
蘊蓄
日本ビクターより発売された国内DVD盤(ジュエル・トールケース盤DVDともに廃盤)には、モノクロ映画にも関わらず、ラスト近く、画面が(鮮血で)、一瞬真っ赤になった、と語られていた公開当時のバージョンが復元収録されている。
ヒッコッツク大ファンのトリフォー監督がじかにその作品についてインタビューしていく内容で、この「白い恐怖」についても言及しており、ダリ起用の理由についても書いてあります。
“わたしがなぜ悪夢のシーンにダリの美術を使いたかったというと、視覚的にシャープで明晰なイメージ―それも映画そのものよりもシャープで明晰なイメージ―がほしかったからなんだよ。あの鋭角的に構築されたイメージ―それはキリコにも似ている―がほしかった。長くのびた影、無限の距離感、あらゆる線がおどろくべき遠近法に収斂されて見事な空間をつくりだしている構図、形のない顔・・・・・。しかし、実際に仕事をしてみると、ダリはとても映画に撮れないような奇態なことをつぎからつぎへと考えだしてへきえきさせられたな。たとえば、彫像にひびが入り、亀裂から無数の蟻が這いだしてきて、イングリット・バーグマンの顔にうようよたかって真っ黒になるなんてシーンがあったんだよ!”(「映画術 ヒッチコック/トリフォー」晶文社より引用)
“ヒッチコックの映画では、私が残してほしいと思った最良の部分のほとんどがカットされた”(「ダリ」メレディス・イスリントン・スミス著/文藝春秋より引用)
グレゴリー・ペックの演技がひどく下手なのも痛い。ペックの役、ヒッチコックの第一希望はケイリー・グラント、第2希望はジョセフ・コットンだったという。まだ経験の浅い俳優だったグレゴリー・ペックは、ヒッチコックに何度も演技指導を頼んだが、ヒッチコックは「何もしなくていい」としか言わなかった
5年たってグレゴリー・ペックがインタビューで『白い恐怖』の撮影中、バーグマンと”愛し合っていた”ことを告白。2人とも既婚者。”2人とも若かった。いけないことだと思い、すぐ別れたけどね”と語っている。
資料
原題 Spellbound
英題 Spellbound
惹句 知性から官能美へ 目もくらむ愛に包まれてバーグマンが変わる!
脚本 ベン・ヘクト、アンガス・マクファイル
原作『ドクター・エドワーズの家 』フランシス・ビーディング
監督 アルフレッド・ヒッチコック
制作 デヴィッド・O・セルズニック
指揮 -
音楽 ミクロス・ローザ
主題 -
撮影 ジョージ・バーンズ
編集 ハル・C・カーン
美術 ジョン・エウィング
協力 サルバドール・ダリ
女優 コンスタンス・ピーターソン博士(精神分析医)/ イングリッド・バーグマン
俳優 ジョン・バランタイン(記憶喪失の男)/ グレゴリー・ペック
俳優 マーチソン博士(医院長)/ レオ・G・キャロル
俳優 ブルロフ博士(コンスタンスの恩師)/ マイケル・チェーホフ
女優 メアリー(男嫌いの患者)/ ロンダ・フレミング
俳優 ガームズ(罪悪感に苦しむ患者)/ ノーマン・ロイド
俳優 フルロー博士 / ジョン・エマリー
俳優 ホテルでコンスタンスに絡む男 / ウォーレス・フォード
俳優 私服のホテルガードマン / ビル・グッドウィン
俳優 クーリー部長(ブルロフ博士の家にいた警察)/ アート・ベイカー
俳優 ギレスビー警部(ブルロフ博士の家にいた警察)/ レジス・トゥーミー
会社 -
配給 東宝洋画部
公開 1951年11月2日
上映 111分
国旗 アメリカ合衆国
言語 英語
費用 約1,696,000ドル
収入 7,000,000ドル(北米興収)、4,970,500ドル(北米配収)
本編を観るには・・・
関連 ~ ヒッチコック映画
参考・引用
白い恐怖 – Wikipedia
映画『白い恐怖』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も【ヒッチコック作品】
『白い恐怖』: 映画フェイス
映画『白い恐怖』ネタバレあらすじ結末|映画ウォッチ
ヒッチコック/白い恐怖~ちょっと気になるDVDエピソード その2
怖さも芸術 「白い恐怖」 : 素晴らしき哉映画人生
映画の中のえん罪事件4
【作品解説】サルバドール・ダリ「白い恐怖」の夢のシーン – Artpedia アートペディア/ 近現代美術の百科事典・データベース
サルバドール・ダリに告ぐ#19・・・「白い恐怖」(1954年) – 飾釦
白い恐怖 | 映画のメモ帳+α
www.asahi-net.or.jp/~AN4S-OKD/okyda/eiga/012087.htm