★[感想]誰も知らない【ネタバレ】

 感想記事の抜粋


原題 誰も知らない
惹句 生きているのは、大人だけですか。
監督 是枝裕和
女優 母 けい子 / YOU
俳優 明 / 柳楽優弥
女優 京子 / 北浦愛
俳優 茂 / 木村飛影
蘊蓄 作中で茂がカップ麺に冷や飯を入れるのは、演じた木村のアイディアである。
もう「誰も知らない」を誰も知らない。知っている私の感想です。

 

 

作品紹介

実際にあった事件を是枝裕和監督がドキュメンタリー・タッチで描いた意欲作。
長男 《 明 》 役の柳楽優弥君がカンヌ映画祭で主演男優賞受賞。
 

 

 

感想(ネタバレ注意)

日本的な映画

語り(ナレーション)もなく、淡々と進むストーリー。感情表現が少ない登場人物達が、それを吐露(とろ)する時・・・。いかにも日本映画らしい一本。あまり邦画は観ない私は、そんな感想を持ちました。

デパートで働く母親と父親の違う4人の子供。母親は長男に子供達を任せ、行方をくらましてしまいます。そして始まる子供達だけの 《 誰も知らない 》 生活。母親の残した金はすぐに底をつき、部屋は汚れはじめ、料金滞納で電気、水道は止められます。長男は子供達の父親(かもしれない)達を訪ね、お金をもらい、コンビニで正味期限切れのおにぎりをもらい、公園の水道水を汲んで、なんとか弟妹の面倒をみます。それをおかしな事とも思わず、ただ母を待つ姿は見てて辛くなっていくのは確か。

唯一晴れ晴れするシーンが中盤に。長男以外は家から出るなという母親の言い付けを破り、みんなで外に出るシーンがそれ。子供が多いことがわかると追い出されるからという理由でベランダにすら出れなかった子供達。長男が決心し、連れだって公園に走る時の子供達の笑顔は本当にキラキラしていました。

もっと悲惨な現実

まさかユキちゃん(一番末の女の子)が死んじゃうとは。終盤訪れる急な悲劇。アポロチョコとキュッキュッサンダルにはジーンときました。この話にはモデルがあるそうです。1988年、巣鴨で起きた子供置去り事件がそれ。現実の方が悲惨で女の子は兄の友達に苛(いじ)めの末に殺されたそうです。
(映画の中では台から落ちて動かなくなったという、ちょっと不自然なものでした)

事件の概略は・・・。

同棲の末生まれた子供の出生届を男は役所に届けず、やがて会社の金を使い込んで蒸発。母親はその後、他の男と子供を作り、自宅出産を繰り返す事に。戸籍のない子供達。嘘で固めた生活の果てに、家を出た母親が次に子供達に会うのはテレビのブラウン管を通してでした。事件が発覚し、マスコミが母親はどこと騒ぎだ出す。

「 ひょっとして私のこと? 」 警察に出頭し子供達に再会。そこで始めて「三女がいない。子供がひとり足りない」という事に気が付いたといいます。現実では兄妹は男2人、女3人の5人兄弟。母親の家出前に次男は病死しており、彼女は次男の死体をビニールで包み、消臭剤を入れて押入れに隠したらしい。長男は同じように三女を処置しようとしたが、臭いが酷く結局電車で秩父まで運び、秩父市の雑木林に埋めたそうです。「 妹に山を見せてやりたいから 」というのがその理由。映画ではゆきちゃんに飛行機を見せようと羽田に行ってました。

映画ではYOUが演じるおかあさんも印象的。いなくなるようで、戻ってきたり、中途半端な面倒の見方にイライラ。子供達に愛されてるのがわかるだけに、歯痒(はがゆ)さを感じます。本当の母親って、どんな人だったんだろう?

演技?ドキュメンタリー?

カンヌ審査委員長のタランティーノ監督は

「 たくさんの映画を見ていると、中には忘れてしまう作品もある。でも、常に頭の中でトップの位置にいたのが “誰も知らない” だった 」

と評価しています。

私は作品よりも子供達の表情が印象的でした。本当に楽しいそうに笑い、遊ぶ姿。是政監督はテレビ時代、主にドキュメンタリー番組を演出。今回も子供たちには脚本を見せず、セリフは耳打ちして教えたそうです。子供達の性格や成長によって脚本を変更。一年かけての撮影だったそうです。だからこれはある意味、演技ではありません。確かに次男のはしゃぎっぷりなど、演技でやれたら天才。こうゆう映画の撮り方もあるんだなぁと感心しました。

薀蓄

作中で茂がカップ麺に冷や飯を入れるのは、演じた木村のアイディアである。
授賞式には柳楽はちょうど学校の試験があり出席せず、代わりに監督が出席した。
主演の柳楽は撮影時期、思春期であったため、撮影した1年で身長が146cmから163cmまで伸び、声変わりをしている。演じた役名の「明」は柳楽が考えた名である。
母親役にYOUが選ばれた理由は、YOU本人によると是枝監督がある日バラエティ番組を見ていた際「いかにも育児放棄しそうで適当なキャラクター」という直感から選ばれたとのこと。女優に演技をさせるよりもリアリティが出て、結果的に高い評価に繋がったのだという。
『誰も知らない』は受賞には不利と言われる映画祭の最初の方(2日目)に上映された。にもかかわらず受賞した理由は、2004年の審査委員長だったクエンティン・タランティーノのコメント「個人的には、彼の表情が一番印象深かった。毎日多くの映画を見たが、最後まで印象に残ったのは彼の顔だった」に凝縮されている。
記者会見時の「え? これ(トロフィー)持って帰っていいんですか?」という発言は普通の中学生ということを印象づける言葉だったが、結局トロフィーはすぐに手元には来なかった(現在どこにあるのか不明だが、2007年NHKの番組内でトロフィーを披露している)。
カンヌ滞在中、自分が表紙になった雑誌を見て「皆で表紙になりたいです」と言っており、カンヌ受賞も「皆を代表してとった」という認識でいる。「『誰も知らない』が何も取らないより取れた方がいいから」という理由で受賞を「嬉しい」と言ったり、学校では聞かれない限りその話はしないなど謙虚な発言が目立っていた。柳楽のポスターは現地で「あのポスターをくれないか」と大人気だった
YOUと柳楽はその後、2006年にダイハツ工業「ミラ」のCMで母と子として再共演を果たしている。

 

資料

原題 誰も知らない
英題 Nobody Knows
惹句 生きているのは、大人だけですか。
脚本 是枝裕和
原作

監督 是枝裕和
製作 是枝裕和
指揮 是枝裕和
音楽 ゴンチチ、タテタカコ『宝石』
主題
撮影 山崎裕
編集 是枝裕和
美術 磯見俊裕、三ツ松けいこ

俳優 福島明 / 柳楽優弥
女優 福島けい子 / YOU
女優 福島京子 / 北浦愛
女優 福島ゆき / 清水萌々子
俳優 福島茂 / 木村飛影
女優 水口紗希 / 韓英恵

配給 シネカノン
公開 2004年08月07日
上映 141分
国旗 日本
言語 日本語

費用
収入 9億2300万円

 


 

本編を観るには・・・


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参考・引用

誰も知らない – Wikipedia
巣鴨子供置き去り事件 – Wikipedia
映画「誰も知らない」子役の現在の活躍ぶり【明・京子・茂・ゆき】 – NAVER まとめ
映画評論 誰も知らない
実際のネグレクト事件を題材にした是枝監督作品「誰も知らない」とは – NAVER まとめ
『誰も知らない』で知られる是枝裕和監督のおすすめ映画7選! | Ciatr[シアター]

更新履歴

5稿)2021年10月26日、シネマドローム
4稿)2017年08月30日、シネマドローム
3稿)2015年09月15日、シネマドローム
2稿)2011年05月20日、シネマパレード~隼
初出)2004年08月30日、東京つまみ食い
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