★[感想]蜘蛛巣城

 感想記事の抜粋


原題 Throne of Blood
惹句
監督 黒澤明
俳優 三船敏郎
女優 山田五十鈴
俳優 志村喬
俳優 久保明
蘊蓄「蜘蛛の巣城」の有名な弓矢のシーンでは、夏みかんをナイフで刺した音で、人の首に矢が刺さった音をつけた。
黒澤明版マクベス、蜘蛛巣城の感想です。

 


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作品紹介

1957年、黒澤明監督のモノクロ時代劇。
シェークスピアの戯曲「マクベス」を日本の戦国時代に舞台を変え、能の様式美の中に描く。
主演は三船敏郎、山田五十鈴。
終盤、三船を襲う矢の嵐はあまりにも有名。
特殊技術として円谷英二も参加していた。

感想

黒澤明の初期の傑作・・・と思ってみたら、1957年公開。30本の黒沢作品の16番目でした。いきものの記録の次の作品だったのね。
シェークスピアの「マクベス」、その舞台を日本の戦国時代に。マクベスってこういう話だったのか・・・。そこに日本の能の様式美を取り入れ、海外でも人気の作品。また、エキストラ人員、オープンセットともに黒澤作品随一のものとか。七人の侍の方が凄そうだけどなぁ。

部下の裏切りに合い、追い詰められた都築国春。鷲津武時(三船敏郎)と三木義明(千明実)の活躍により形勢は逆転。謀反は無事鎮圧されます。二人の武勲を称え、城へ呼び寄せる国春。その途中、蜘蛛手の森で道に迷う武時と義明。妖しげな老婆に出会い、そこでこう告げられます。

「鷲津武時は、まず北の舘の主となり、やがては蜘蛛巣城の主となる」
「三木義明の息子が、鷲津の後に蜘蛛巣城の主となる」
「森が動かぬ限り、鷲津が戦に敗れることはない」

マクベスの3人の魔女役がこの老婆。パッと消えたり、小屋が消えたりするトリックは、やっぱり円谷英二のアイデアなのかな。この後、この予言がひとつひとつ現実のものとなります。そして、森までもが動くことに。

面白かった点を順に上げていくと・・・。まず謀反に対峙する都築国春。戦っているシーンは入らず、報告に来る伝令の言葉だけで戦況を見せます。合戦シーンを入れても入り乱れてて戦況はわかりにくいもの。序盤だしあっさりと流したのかな、潔いです。伝令の言葉が聞き取りにくいですが、これは懸命に駆けて来たという演出?

予言をする老婆、最後パッと空を飛んだように見えました。CGとか使わなくても驚けます。黒澤明は同時期にヒットしたゴジラに大変興味を持っていたとか。怪獣ものが撮りたい。しかし、映画会社が慌ててそれを止めたそうです。完璧主義で知られた黒澤監督。撮影にどれだけ費用がかかるかわかったものではないからです。www

三船敏郎の侍姿。やはり似合います。眼力(めじから)あり過ぎ。その豪放磊落な鷲津が妻の入れ知恵に迷い、疑心暗鬼になり、幻をみて刀を振り回す。自信一杯で身を滅ぼしていく姿が哀しいです。
そうだとわかっていても、そうせざるを得ない。そうなっていく展開にまったく違和感がないところが凄い。シナリオがいいんだなぁ。手品は最後どうなるか教えないから驚くのですが、これは。いつもの四人組で書いたんだろうなぁ。
最後の動かないはずの「森が動く」に感動。
マタンゴか(^^;

能のことがよくわかりません。なので評判の山田五十鈴の演技の凄さもわかりませんでした。予言の老婆にとりつかれているのかと思うほど、武時を翻弄する妻、浅茅(あさじ)役。能面のような化粧。赤ん坊が死産になった後、おかしくなり、血が落ちないと必死に手を洗う姿。黒澤監督にして「このカットほど満足したカットはない」と言わしめた演技。でもいったい眉毛はどうなっているんだと、そっちの方が気になりました。
(^^;
その登場人物に感情移入して見ちゃうタイプなので、違和感無く演じられると、それだけで凄いと思ってしまうからかなぁ。普通に巧いと感じただけでした。
今までいろいろ映画やドラマを見ましたが、演技が凄いと思ったのは一人だけ、入江たか子さんです。それも原田知世の「時をかける少女」に、何気ない役で出演していた時。この人は誰?と調べて、化け猫俳優としてい有名と知り、驚いたことを覚えています。退屈な映画でしたが、悲しみ涙する姿に心が震えたが忘れられません。まぁ多感な時期でしたから。
f(^^)

有名な弓矢のシーン。見方の裏切りに合い、弓矢打たれまくり。一番初めに見たときには矢の動きにちょっと違和感を感じました。壁に吸い付くような動き。調べてみるとこの矢は筒状になっていて、見えないワイヤーを通しているらしい。なのでどんなに強く射てもワイヤーに沿って飛ぶだけ。なんだ、安全なんだ。撮影エピソードにはあまりに危険な撮影に三船敏郎が前の晩眠れなかったとか、撮影後に頭にきて散弾銃を持って監督を追いかけたとか、読んだけど・・・あれは話題作り?
と、思って再度弓矢シーンを見ました。すると矢が飛んで直接腹に刺さるシーンや、首を貫通するシーンが。こ、こ、これはやっぱり怖いでしょ。
(==;

薀蓄

巻頭の霧の中から城の現れるシーンは、ハリウッド映画『未知との遭遇』(1978年)で、第二次大戦中行方不明となった海軍機が砂嵐の中から姿を現すシーンや、宮崎駿の『ハウルの動く城』冒頭の、霧の中から現れる「動く城」など、多くの映画のオープニングシーンに影響を与えたといわれる。

シェイクスピアの四大悲劇の一つとして知られる『マクベス』を翻案した作品であるが、作品の構成、人物の表情・動き、撮影技法には能の様式美を取り入れている。

製作日数・製作費共に破格のスケールで作られた。物語の舞台である蜘蛛巣城のセットは、富士山の2合目・太郎坊の火山灰地に建設された。足場の悪い火山灰地での建設のため、近くに駐屯していた進駐軍にも手伝ってもらい、ブルドーザーで火山灰を掘って土台を建てた。このセットは、晴れた日には麓の御殿場市の街から見えたほどの巨大なものになったという。

俳優の土屋嘉男や千秋実らは撮影期間中、太郎坊のロケ現場と麓の旅館を、三船敏郎の自家用車のジープに乗せてもらって往復していた。全員、扮装も衣装も劇中の武者姿のままだったという。

浅芽発狂の場面は、ステージの中での撮影だが、わざわざ日中を避けて深夜に撮影が行われた。浅芽を演じた山田五十鈴は、黒澤にして「このカットほど満足したカットはない」と言わせた迫真の演技を見せた。

鷲津武時に騎馬の伝令が敵情を緊急報告する場面で、ベテランの馬術スタッフが急に「役が重すぎる」と怖気づいてしまった。このため、乗馬の心得のある土屋は再び黒澤監督から直々の頼みを受け、この伝令の役を演じている。土屋は3回目のテイクが会心の出来だったが、黒澤監督は馬の動きに注文を出し、何度もテイクを重ねた。たまりかねた土屋はわざと監督めがけて馬を走らせて、逃げる監督を追いかけ回し、3度目のテイクにOKをとらせた。あとで黒澤監督は土屋に「さっき俺を殺そうとしただろう、あの眼には殺気があった」と言ったという。

三船演ずる武時が次々と矢を射かけられるラストシーンは、編集によるトリックではなく、学生弓道部の部員が実際に三船や三船の周囲めがけて矢を射た(ただし、筒状の矢にワイヤーを通し、着点に誘導したもの。また遠距離からではなく、カメラフレームすぐ横からの射的)。撮影が終了した後、三船は黒澤に「俺を殺す気か!?」と怒鳴ったとのことである。その後も、自宅で酒を飲んでいるとそのシーンのことを思い出し、あまりにも危険な撮影をさせた黒澤に、だんだんと腹が立ってきたようで、酒に酔った勢いで散弾銃を持って黒澤の自宅に押しかけ、自宅前で「こら~!出て来い!」と叫んだという。石坂浩二の話によると、このエピソードは東宝で伝説として語り継がれている。また、このシーンに関して、橋本忍によると、弓を射るのが師範クラスではなく学生だったので、三船は本気で恐怖を感じていたという。そのため、撮影の前日は眠ることも出来ないほどだった。それもあって、三船の酒の量が超えたときに、刀を持って黒澤が泊まる旅館の周りを、「黒澤さんのバカ」と怒鳴りながら回ったという。黒澤自身は三船を怖がって部屋に籠っていたと語っている。そんな三船は頻繁に「黒澤の野郎、あいつバズーカ砲でぶっ殺してやる!」ともらしていたという。

「蜘蛛の巣城」の有名な弓矢のシーンでは、夏みかんをナイフで刺した音で、人の首に矢が刺さった音をつけた。

武時の首に矢が刺さるシーンについて黒澤監督は「あれは簡単な方法なんです。スタッフでどういうふうに撮ろうと話し合ってたら、スクリプターのノンちゃん(野上照代さん)が、〈ストップモーションでゆくより仕方がないでしょう〉と言うんだな。まず弓のうまい人を集めて、三船君のまわりへバアッと射掛ける。それを望遠で狙っていて、途中でストップをかけるんです。次には、床山(小道具などの係)が出て行って、三船君ののどへ矢を貼り付けるわけだな。そこで改めて、また〈スタートッ!〉と矢を射掛けるんです。それを編集するとき、首と同じ軌道を走って入ってくる矢、出て行く矢をよくよく見定めておいて、そこへピシャッと、三船君のストップモーションを投げ込むんだ。そのガクッと揺れて入る効果が、予想外にうまく感じをだしてね。編集してみて、自分でちょっとびっくりしたんです。」と語っている(「全自作を語る」より)

無数の木々がまるで生き物のように迫ってくる場面は、スローモーションと望遠レンズの併用で撮られた。

資料

原題 蜘蛛巣城
英題 Throne of Blood
惹句
脚本 小国英雄、橋本忍、菊島隆三
原作 ウィリアム・シェイクスピア(『マクベス』より)

監督 黒澤明
制作 黒澤明、本木荘二郎
指揮
音楽 佐藤勝
主題
撮影 中井朝一
編集 黒澤明
美術 村木与四郎

俳優 鷲津武時 / 三船敏郎
女優 鷲津浅茅 / 山田五十鈴
俳優 小田倉則保 / 志村喬
俳優 三木義照 / 久保明
俳優 都築国丸 / 太刀川洋一
俳優 三木義明 / 千秋実
女優 老女 / 三好栄子

会社 東宝
配給 東宝
公開 1957年1月15日
上映 110分
国旗 日本
言語 日本語

費用
収入 1億9800万円
 


  

本編を観るには・・・


 

関連

参考・引用

蜘蛛巣城 – Wikipedia
SmaSTATION-5
MONOGUSA blog: 黒澤明「蜘蛛巣城」
黒澤明監督の「蜘蛛巣城」という映画の最後で、主人公(三船敏郎)の首を1… – Yahoo!知恵袋
蜘蛛巣城 ・ どん底:星空の散歩者:So-netブログ
蜘蛛巣城 – 素人目線の映画感想ブログ
蜘蛛巣城:黒沢明の世界
『蜘蛛巣城』(1957)水墨画のような映像美。黒澤映画史上もっともドロドロとした作品でもある。:良い映画を褒める会。

更新履歴

3稿)2021年06月16日、シネマドローム
2稿)2018年03月06日、シネマドローム
初出)2015年12月11日、シネマドローム
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