★[感想]告白【長文】

ガキ共、思い上がるんじゃねぇ。静かに大人の復讐が始まる。告白の感想です。
 

 

作品紹介

原作は湊かなえ、2009年本屋大賞受賞。
監督は《 下妻物語 》、《 嫌われ松子の一生 》 の中島哲也。
冷静に復讐を果たす女教師を松たか子。空回りする熱血教師を岡田将生。少年Bを溺愛する母を木村佳乃。
 

感想

初めに後書き

話題の映画、《 告白 》を観ました。日本のみならず、海外でも注目されているこの作品。興行成績的にも上々のようです。新宿で見る映画のような気がしましたが、有楽町マリオンで鑑賞。日曜日、17時00分の回。思ったほど混んでませんでした。観客の年齢層は高め、一人で観に来てる人が割と多いです。私の左隣の女性、Kさんの右隣りの男性、共に一人で来てました。後味の悪い映画は一人で見ると、帰りが悲惨そうだけど。
(-_-)

感想0、予告編

トレーラーを見ると。娘を殺した犯人は生徒たちの中にいる、そう気付いた女教師が改めてクラスに向き合って愕然。生徒たちの異常さ、恐ろしい裏の顔に驚き、最後ほんとうの黒幕と対峙する。
そんなミステリーっぽい話にみえます。しかし全然違いました。むしろ倒叙もの。ミスリードで、映画を見せちゃうホイホイCM。後味が悪く、その原因が松たか子にあると想像すらできませんでした。

《 ここから下は映画が見たなるネタバレ感想 》

あらすじ

教室。終業式のホームルーム。大騒ぎの生徒たち。気にも止めず、淡々と生徒たちに話し掛ける女教師、森口悠子。夫がエイズであること。娘の将来を思い入籍しなかったこと。その娘を保育園に預け教師をしてたこと。時々時間が合わない時は娘が学校に来てたこと。
配られた牛乳を飲み干す生徒、投げて遊ぶ男子、途中で床に落とす女子。娘が学校のプールに落ちて死んだこと。そして、それは警察が言うような事故ではないこと。本当はこのクラスの生徒が殺したこと。自分がその犯人を知ってること・・・。
静かになる教室。女教師は続けます。犯人は少年Aと少年B。少年Aは成績優秀、コンテストで賞を取り・・・

《 修哉だ! 》

ケータイを巡るメール。少年Bは・・・。二人の少年の行動、事件の経緯を淡々と語る悠子。誰が許しても自分は二人を許さない。そして今自分は復讐を果たした。配られた牛乳、実は二人の分、その牛乳の中には夫の血液が注入してあったのだと。口を押さえ、トイレに駆け込む少年A。

怖~~い。o(><)o

ひとつめの告白。おんな教師のそれは、強烈でした。冒頭の数十分。物語のほとんどがここに凝縮されています。物語はこの後、虐めを受けながらも登校する少年A、修哉。引きこもる少年B、直樹。冷静に事件とその後を見つめる少女、美月。それぞれの断片的な告白へと続きます。

感想1、森口悠子

まず、松たか子が怖い。たかが子供、されど中学生。年々子供は可愛くなくなっているにせよ、女教師の本気の復讐、冷静な仕打ちは、なんとも後味を悪くします。でも、悪いことは悪い。それを正せなくて何が先生だ。ある意味、初めて生徒と対等に付き合っている先生のような・・・。
ただ、必殺仕置き人みたいに、悪いやつはぶった切ると言うような爽快感はなし。沈着冷静に獲物を追い詰める姿は後味が悪いです。

 φ ウェルテルを利用し、直樹を追い詰める。
 φ 一番大切なものを、修哉自身に破壊させる。

例えそれが愛娘の復讐のためとは言え。もっともそこがこの映画の持ち味なのですが。

感想2、ウェルテル

森口悠子に替わってクラスを受け持つことになる教師ウェルテル(岡田将生)。ひと昔前の学園ドラマに出て来そうな熱血先生です。わからなかったのが、ウェルテルに対する反応。初めは時代遅れのやつがきたけど、面白いからからかってやろう、という反応に見えたのですが。ドラマのような先生が来たことを喜んでいるようにも見えて・・・。映像からは読み取れませんでした。狙ってそうしてる風にも見えないし。原作で文字で見てみないとわからないなぁ。ただ、熱血が空回りしてるのは伝わってきて、それが原作者の学園ドラマに対する皮肉のように思いました。

1972年 飛び出せ!青春(村野武範)
1974年 われら青春!(中村雅俊)
1978年 ゆうひが丘の総理大臣(中村雅俊)
1979年 3年B組金八先生(武田鉄矢)
1979年 熱中時代(水谷豊)
1984年 スクール☆ウォーズ(山下真司)
1988年 教師びんびん物語(田原俊彦)
1996年 みにくいアヒルの子(岸谷五朗)
1998年 GTO(反町隆史)
2002年 ごくせん(仲間由紀恵)
2003年 ヤンキー母校に帰る(竹野内豊)
2005年 女王の教室(天海祐希)
2006年 マイ☆ボス マイ☆ヒーロー(長瀬智也)
2008年 ROOKIES(佐藤隆太)

いろんな先生がドラマに登場したけど、本当にいたら煩わしそう。私が実際に教わった先生の方がリアリティがあって(当然だけど)、勉強意外のことをたくさん発信してくれました。社会に出た時、そっちの方がどれだけ役に立ったか。もちろん、反面教師的なところを含めてですが。
それにしても、ウェルテルの告白が聞きたかったなぁ。そこが原作者の冷たいところです。
 

感想3、修哉

少年A、渡辺修哉。彼の行動の源にあるのは自分を捨てた母。トップクラスの大学で研究をしてた彼女が予定外の出産。私の子供なんだから。しかしその期待に応えられなかった幼い修哉。息子を捨てる母。
成長とともに高まる母への思い。世の中に認められれば、母は戻ってくる。そう信じた彼は発明コンクールに応募、そして入賞。しかしその日新聞の見出しを飾ったのは、親を毒殺した少女の記事。有名になるんだったら、悪いことをしなければ駄目だ!犠牲になる幼い少女、静かに復讐を誓う女教師。
う~む。中学生くらいでも、母が恋しいとかあるんだろうか? 友達と遊ぶのが一番楽しい時だったけど。むしろ母親が鬱陶しく感じる年頃ではないのか。
クラスで無視され、さらに悪化していく修哉。美月との絡みの後、爆弾を作り始めます。弱点を掴んだ女教師はそれを逆手に復讐を果たします。
映画を見ると自然にエンディング予想を始めるのですが、今回はしませんでした。なぜならば、これはジグソーパズルのような映画だから。

松たか子の誘導による修哉の自滅。

そういうエンディングは、パズルの箱に書いてある完成図を見るのと同じくらい明か。これは途中経過を楽しむ映画だと思ったからです。
d(’◇’)
・・・まぁ、見た後だからそう言い切ってる訳ですが。f^_^;

感想4、直樹

少年B、下村直樹。修哉とは対照的、母に溺愛されている少年。血液牛乳を飲まされてから、家に引きこもり、精神異常に。ここにも母親の影か・・・。木村佳乃演じる母、優子は子供以外には興味がない、他からは興味をもたれない女性。広い家に住んでるのに、小さな小さなコミニティ。直樹は母親に気を止めることもなく、引きこもり。彼の告白は意外なものでした。修哉にいいように使われいたのか、直樹の小さな反抗。幼い娘はあの時、まだ生きていた。それを知りながら、プールに投げ込んだ直樹。

修哉が悪い! 修哉が悪い! 修哉が悪い!

そう決めていた母はその告白に狼狽、完全に壊れた直樹に殺されてしまいます。
看板女優が演じる役にしては普通。カードローンで世界の飛び回ってる木村佳乃というより、三大薄幸女優のひとり、木村多江に演じてほしかったな。

感想5、美月

クラス委員の美月。冷静に女教師を見て、クラスを見て、ウエルテルを見て、修哉を見る。事件の後も登校を続け虐めにあう修哉に、美月は殉教者の姿を見い出します。美月が集めてる薬品。修哉が作りはじめた爆弾。このふたつが近付き、そして近付き過ぎて、あっさりと殺されてしまいます。血液牛乳について、松たか子に詰め寄ったシーンには、復讐教師2の素質すら感じたのに残念。ちなみに美月が女教師と対峙するこのシーン。私が同時にこんなバッドエンディングが見えてました。

私の修哉になんてことしたの!

そう叫ぶ美月の前には、白目を剥く女教師。彼女が飲み物に仕込んだトリカブトの効き目は即効。高らかに笑う美月。もちろん、そんなシーンはないのですが。
 

感想6、非現実感

ドラマには現実感のあるものと、ないものがあります。それはストーリーとか、登場人物とかではないようで。はっきりとはわかりません。カット割とか、無駄なシーンのあるなしで分かれるような気がします。そして、この映画には現実感を感じませんでした。なぜだろう? 屋上で顔にボールをぶつけられる生徒の痛みは伝わってきたのに。どの生徒も

《 は~い!カット~ 》

と監督から声がかかると、お疲れ様でした~と素直に頭を下げてる風景が目に浮かびました。撮影中、中島監督はかなり厳しかったとのこと。演技に緊張感が現れすぎたか。

感想7、凶器としてのエイズ

初めの牛乳に血液を仕込むシーン。その他にもこの映画では、エイズを武器として使うシーンが出てきます。それは修哉がクラスからのイジメに対抗するシーン。無理矢理、美月とキスさせられ、切れた修哉が自分の指を切り、クラスメートの頬に血をなすり付けます。驚く男子生徒、パッと広がり、彼から身を引く生徒たち。
終盤、問い糾す美月に松たか子が《 牛乳に血を入れたくらいじゃ、感染などしない 》と笑いながら説明するシーンがありますが、それにしても感染者から見たら酷い差別に感じる人がいるのでは。
 

 

薀蓄

映画化に当たって中島は本作にて脚色も担当し、ストーリーの時系列が原作とは異なっている。
廃校となった栃木県立芳賀高等学校がロケ地として使われ、同校体育館ではクライマックスの終業式のシーンが撮影された。
「日本工科大学理工学部」は群馬県の昭和庁舎で撮影されている。舎内では爆破シーンも撮影されたが、歴史ある建物ゆえに火薬などを使った撮影は許可が下りず、ブルーシートを張ってコンピュータグラフィックスを使っての撮影となった。
公開初日の2010年6月5日限定でテレビCMの中で映画のラストシーン、松が泣きながら生徒の髪をわしづかみにし「あなたの更生はこれから始まるの」と鬼の形相で迫るシーンが放送されたが、ラストシーンをCMに使用するのは異例なことであり、中島はネタばれを恐れて「ここまでやらなきゃいけないのか」と不安をもらした。
配給の東宝には米ハリウッド3社からリメイクのオファーがあり、アイルランド、香港、台湾への配給も決定された。
撮影中、スタッフが事故で死んでいる。
生徒(桐谷修花)役で能年玲奈が映画初出演している。

資料

原題:告白
コピー:告白が、あなたの命につきささる。
監督:中島哲也
脚本:中島哲也
原作:湊かなえ
制作:島谷能成、百武弘二 ほか
製作総指揮:市川南
音楽:金橋豊彦
主題歌:ー
撮影:阿藤正一、尾澤篤史
編集:小池義幸

森口悠子(女教師):松たか子
寺田良輝(熱血教師ウェルテル):岡田将生
下村優子(少年Bの母):木村佳乃
渡辺修哉(少年A):西井幸人
下村直樹(少年B):藤原薫
北原美月:橋本愛

配給:東宝
公開:2010年06月05日
上映時間:106分
製作国:日本
言語:日本語

興行収入:38.5億円

映画「告白」劇場予告 – YouTube


 

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参考

告白 (2010年の映画) – Wikipedia
映画は人を殺してもいいのか?~映画「告白」の裏側で亡くなった若手スタッフについて~|映画は靴の中の小石でなければならない
超映画批評『告白』95点(100点満点中)
能年玲奈の映画初出演は「告白」 | かわいい!能年玲奈ファンブログ!

更新履歴

初出)2017年10月04日、シネマドローム
初出)2015年09月20日、シネマドローム

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