原題 ノストラダムスの大予言
惹句 1999年人類滅亡。
監督 舛田利雄
俳優 丹波哲郎
俳優 黒沢年男
女優 由美かおる
女優 司葉子
蘊蓄 特に赤潮のシーンでは、東宝特撮伝統の寒天で海を表現する技法が用いられており、・・・。
完全新作。やっと全編を観ることができました!「ノストラダムスの大予言」の感想です。
作品紹介
1974年公開。文部省の推薦映画(当時)。
「日本沈没」に続いて、東宝が製作したパニック映画第2弾。原作は五島勉の同名著書。
同時上映は『ルパン三世 念力珍作戦』。
感想
ノストラダムスの大予言(1974年、東宝)、全編観ることができました。恐怖の大王の正体は? 封印作品となった問題シーンとは? すべてわかってしまいました。
(^◇^) へぇ~、そうだったんだ。
物語はなんと嘉永5年、幕末の長崎から始まります。蘭学者西山玄学が塾で諸世紀を引用、そこに幕府の役人が。玄学は捕らえられてしまいます。
続いて、第二次世界大戦末期。哲学者西山玄哲が日本が戦争に負けると説き、民衆を迷わせていると軍部に拘束されます。
そして現代。環境学者である西山良玄は企業や警察の圧力に屈することなく、環境問題を訴え、このままではノストラダムスの予言通り、人類は滅亡すると訴えます。諸世紀を一族で伝承する西山家、凄い設定・・・。
五島勉が日本でのノストラダムスの始まり。誰もが知る中で、あえて話を幕末から始める。その頃の出来事もノストラダムスは予言していたとつなげる辺りは巧みな展開です。
この後、物語は公害が酷くなり、生まれる子供は奇形児だらけ、生物は巨大化し、人類を襲い始め、食料不足が争いを生み、人類を核戦争へと駆り立てると続きます。
物語は私の想像とは大きく違う展開。ノストラダムスがどうのと言うより、科学の進歩が環境を破壊、それをなんとか止めようとする良玄の話がメインです。所々で引用されている予言が、あれ?当たってる!?と言う程度のつながり。
超常現象が人類を襲う、驚異の大スペクタクル。そして最後に恐怖の大王が現れて・・・を想像していた私は拍子抜け。小さくまとまっている感じがしました。日本沈没で儲けたはずなのに、制作費があまりなかったらしい。
スペクタクルシーンと呼べるのはわずか。夢の島に体長1mのナメクジが数匹出たとか、海岸に大量の魚の死体が打ち上げられとか 。地下鉄に巨大雑草が生え電車が止まるシーンと、エジプトに雪が降って寒そうと言うシーンもあったか。大雨が続き洪水になるシーンが一番の力作ですが、現実でもっと悲惨なのを見てるからなぁ。でも光化学スモッグに映る逆さまの街(蜃気楼)は幻想的で、おっと思いました。
封印作品になった原因のひとつ、ミュータントの描写も妖怪人間ベムが実写化されたのかと思った程度。登場時間もちょっとだけです。由美かおると黒沢年男もとっても付けたような恋人同士で、キャラクターが生かされてないような。もったいない。
主人公、西山良玄(丹波哲郎)がうるさいです。
(^◇^;
丹波哲郎の圧倒的な存在感。演技と言うより彼の個性、でも愛嬌があり、憎めません。
良玄の主張は環境保護。その主張は70年代よりむしろ今、SDGSが叫ばれている令和の世に相応しい気がしました。今なら賛同する人も多そう。この頃から、もっと地球のことを考えていれば、温暖化もなかったかも。
(映画の中では環境破壊で、地球は寒冷化。ハワイの海が凍ります)
いくつかドキリとする発言も。良玄は原子力発電所を一蹴。地震がくれば、役に立たないと説きます。汚染水の処理方法も見つかってない半端の技術だと。・・・って、そんなに昔から問題になっていたのか汚染水。頭がいい博士(ひと)がたくさんいるのに解決できないっていったい。理系頑張れ。
2022年3月現在(ロシアのウクライナ進行中)だと、例え局地戦でも核ミサイルが使われると人類は滅亡すると言う話も怖いです。
終戦後の復興期、その終わりに花開いた東京オリンピック・大阪万博。そこで見た薔薇色の未来は長続きしませんでした。人口増加・公害・薬害・オイルショック・・・問題が吹き出し、日本は現実世界に引き戻されます。日本沈没のような終末ものが人気に。そんな中ノストラダムスの大予言は、当時の少年少女たちに与えた影響は大きかったと思います。1999年7の月に人類は滅亡する。私たちに未来はないのだと・・・。
1999年7月が過ぎ、予言は外れましたとなった時、私は小まめにニュースをチェックしていました。誰かが五島勉を惨殺すんじゃないかと思ったからです。しかし、そんな事はありませんでした。怨みに思ってる数多くいると思ってたんですが。
五島勉さんは晩年、2001年に起きた同時多発テロが恐怖の大王だったと言い出したとか。その話を聞いたとき私は思いました。ノストラダムスに翻弄されたのは、他ならぬこの人自身だったのではと。御輿に担がれ、躍りされただけ、そう思うと、ちょっと不憫になりました。
死ぬのが怖いのは生きている証拠。この手の話は適度に怖がって楽しむのが健康的なのかもしれません。恐い現実を忘れるためにも、それは必要なのかもしれません。
終わり
蘊蓄
当時のパニック映画と同様に、派手な爆発シーンや地震のシーンが新たに撮影されている。特に赤潮のシーンでは、東宝特撮伝統の寒天で海を表現する技法が用いられており、核ミサイルの発射シーンでは石膏製のサイロ扉に重りを封入することで重量感を増すといったような工夫が随所になされている。特技監督の中野昭慶は、特撮シーンはドラマに絡まない現象面だけであったため、絵物語としての楽しさを意図したことを述べている。ただし、ICBMのシーンのみは現実的な恐怖として描いている。
超紫外線が降り注ぎ山林が一気に枯死していくシーンでは、杉の芽を植えた山のセットに希硫酸を降りかけることで表現されたが、スタッフの予想よりも茶色くなるのに時間がかかり、中野昭慶は「改めて自然の強靭さを知らされた」と語っている。
干上がる沼は、セットの下で火を焚いて実際に水を蒸発させている。熱帯の海が氷結するシーンでは、25トンの氷塊が用いられた。一方、本作品のクライマックスの核戦争や大地震のシーンは新撮もされているが、映像の一部は前年の『日本沈没』や『世界大戦争』からの流用である。
干上がる沼は、セットの下で火を焚いて実際に水を蒸発させている。熱帯の海が氷結するシーンでは、25トンの氷塊が用いられた。一方、本作品のクライマックスの核戦争や大地震のシーンは新撮もされているが、映像の一部は前年の『日本沈没』や『世界大戦争』からの流用である。
1974年5月に「オゾン層破壊による超紫外線の影響で山火事が発生する」という特撮場面を世田谷区砧の東宝撮影所第7スタジオにて撮影中、ライトを照射しすぎて高温となったためにミニチュアセットが発火し、火災が発生した。
映画の中で引用されているノストラダムスの予言(五島勉版)
番号不記載の詩
わだつみを越えて 黒いまが船が エダという都につき 力によって開きぬ
(黒船による開国、西山玄学が塾の講義で引用する)
第6巻49番の詩
巨大なマモンの司祭の一党によって ドナウ川の両岸は すべて征服される
(ナチス・ドイツの侵攻、捕らえられた玄哲が軍人に訴える)
第2巻59番の詩
ゴールド部の部隊は大きな救援に助けられるだろう 巨大なネプチューンが3つの部隊を・・・
(ノルマンディ上陸作戦、捕らえられた玄哲が軍人に訴える)
第3巻13番の詩
弓型の中で金銀も溶けるような光がきらめく 捕らわれ人は一方が他方を食う その最大の都市はまったく荒廃し 艦隊も沈むので泳がねばならない
(広島に落とされた原子爆弾、捕らえられた玄哲が軍人に訴える)
セオフィラスの異本
女が船に乗って空を飛ぶ まもなく大王がドルスで殺される 涙に溢れた愚か者達によるもので
(テレシコワの宇宙飛行とケネディ暗殺、オープニングナレーション)
第1巻63番の詩
大戦争が過ぎ去ったあと、世界は小さくなる 陸地には人間があふれる 人々は空や大陸や海を越えて旅をする その間にいくつかの新しい戦争が 引き続き起こる
(戦後の平和、オープニングナレーション)
第2巻48番の詩
巨大な軍隊は山をこえて引き上げるだろう 鮭の頭にも毒がかくされるようになる だが彼らの大物は極地で和の中に括られるだろう
(公害・環境汚染、オープニングナレーション)
だれも見たことのない巨大な雷神がきらめくとき 両手のない子供が現れる
(サリドマイド、西川家で良玄のAF2の説明)
第2巻46番 人類は莫大な消費の後、さらに莫大な消費に向かう そして巨大なモーターが時代を一変する
雨、血、ミルク、飢饉、兵器、疫病 そらには長い炎を吹き出すものが飛び回るようになる
(終末世界、環境庁会議室での公害対策会議)
第10巻71番の詩
大地と大気は冷えていく 大きな氷もいっそぎ 恐れの木曜日がおとずれるとき そしてもう晴れることはなくなった
(異常気象、臨時ニュース中)
第1巻22番の詩
生きてはいるが、若者たちはその意味をついにつかめない 薬をあおり男女ともに滅びていくだろう
(ヒッピー?、ゴーゴー喫茶)
第10巻98番の詩
美しい乙女の輝き それはもう輝くことはない すべてもものは毛と皮がむけ 狂って争う 怪物が地球をおおうことになる
(破滅後の世界、バイクで飛び降り自殺する若者たち)
第1巻69番の詩
戦争 平和 食糧不足 水害のあとで大きな道路がくずれた その大きなコンタードは沈んでいく
(地盤沈下、???)
第2巻75番の詩
小麦の値段は跳ね上がり 人が人間を食う時代が訪れるだろう
第10巻72番の詩
1999年7か月 空から恐怖の大王が来るだろう アンゴルモアの大王を蘇らせ マルスの前後に首尾よく支配するために
資料
原題 ノストラダムスの大予言
英題 Prophecies of Nostradamus
惹句 1999年人類滅亡。
脚本 八住利雄
原作 五島勉
監督 舛田利雄
製作 田中友幸、田中収
指揮 -
音楽 冨田勲
主題 -
撮影 西垣六郎、鷲尾馨
編集 ***
美術 村木与四郎
視覚
殺陣
俳優 西山良玄、西山玄哲、西山玄学 / 丹波哲郎
女優 西山まり子 / 由美かおる
俳優 中川明 / 黒沢年男
俳優 植物学者 / 平田昭彦
俳優 動物学者 / 小泉博
俳優 田山 / 谷村昌彦
俳優 環境庁長官 / 鈴木瑞穂
俳優 太田一雄(テレビニュースキャスター)/ 納谷五郎
俳優 病院院長 / 志村喬
女優 西山伸枝 / 司葉子
女優 予言の声 / 岸田今日子
会社 東宝映像
配給 東宝
公開 1974年8月3日
上映 114分
国旗 日本
言語 日本語
費用 6億5000万円
収入 8億8300万円
本編を観るには・・・
参考・引用
ノストラダムスの大予言 (映画) – Wikipedia
ミシェル・ノストラダムス師の予言集 – Wikisource
ノストラダムス wiki : ノストラダムスの大事典 – atwiki(アットウィキ)
文部省推薦映画がまさかの発禁!幻の映画に…『ノストラダムスの大予言』 | ピンキー高井の映画ブログ