原題 Apocalypse Now
惹句 魂を揺さぶる 2時間30分の旅
監督 フランシス・フォード・コッポラ
俳優 マーロン・ブランド
俳優 ロバート・デュヴァル
俳優 マーティン・シーン
女優 シンシア・ウッド
蘊蓄 フィリピンにはフィルムを現像するラボがなく、コッポラは撮影をすべて終え、アメリカに帰るまで現像されたフィルムを見ることができなかった。
朝のナパーム弾の臭いは格別だ。戦争映画、地獄の黙示録の感想です。
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紹介
1979年公開。フランシス・フォード・コッポラ監督の戦争映画。ベトナム戦争を批判的に扱った最初の映画(制作発表時)。
ベトナム戦争後期。アメリカ陸軍空挺将校のウィラード大尉は、元グリーンベレー隊長のカーツ大佐の暗殺指令を受ける。大佐は上層部の命令を無視、カンボジアのジャングルに独立王国を築いていた。
主演はマーロン・ブランド、マーティン・シーン。若き日のハリソン・フォードやローレンス・フィッシュバーンも出演。
2001年、53分の未公開シーンを含む特別完全版が公開された。
感想
amazonプライムの会員になりました。ただいまプライムビデオをあれこれ物色中。ずいぶんと本数があるなぁ、嬉しい悲鳴です。
そして、地獄の黙示録会員特典(無料)になっているのを発見。最近、コミック原作か、ゾンビものばかりのハリウッド。ベトナム戦争の映画ってないなぁ。もう半世紀も前の出来事だものなぁ。
地獄の黙示録はフランシス・フォード・コッポラ監督の戦争映画。ロードショーの時、日比谷の映画館で見た記憶があります。アメリカ軍を揶揄した映画は、今ではさほど珍しくないですが、これはそんな映画の先駆けとなったもの。もっとも、わがままなキャスト、恵まれぬ天候、監督の完璧主義などで、製作日数は大幅に超過。後から企画されたディアハンターが、先に公開されてしまいましたが。
今回は映画の4つの地獄(シーン)に着目して、感想を挙げていく予定です。
ワルキューレの騎行地獄(2020-08-26)
まずは超有名、攻撃ヘリ(UH-1)でのベトコン急襲シーン。ウィラード大尉がカーツ大佐の暗殺指令を受け、カンボジアに向かう旅、その序盤に登場します。
この映画、後半訳がわからんと批判の声が多いです。(2001年宇宙の旅は、この点上手くやったということか)。でも、そう言ってる人もこのシーンだけは必見だと認められています。
攻撃ヘリに同乗したウィラード大尉。周りには冗談を交わしながらも、緊張を隠し切れない兵士たちが。キルゴア中佐は景気付けに音楽をかけようと言い出します。大音量で鳴り響くのはワーグナーのワルキューレの騎行、この攻撃は試合かなにかなのか?
(^^;
編隊を組み、海上を進む攻撃ヘリ。浅瀬になり、高度を下げます。う~む、ブリュンヒルデが実体化するとこんな感じになるのか。
(ワルキューレは北欧神話において、戦場で生きる者と死ぬ者を定める女性。ブリュンヒルデはその神話を元にワーグナーが作曲した楽曲、ニーベルングの指環に出てくる双子のワルキューレの一人です)
青い空、青い海。攻撃に備えるベトナム側は手作り感たっぷり、明らかに兵器の質と量が違います。
小学校から子供たちが出てきました。一列に並び、女先生が誘導して待避。置いてかれた小さな子、生徒の一人が連れ戻します。助け合ってるなぁ。
(@@。
村の上空に到達、進行方向に向けてたカメラが、陸を覗くように下を向いた時は、前のめりになりそうでした。自分も戦場にいるかのようです。
蜘蛛の子散らすよう、圧倒的に有利な攻撃ヘリ。下手な鉄砲、数打ちゃ当たる的なベトナムコンサン(ベトコン)軍とは対照的に、一発で仕留めていく攻撃ヘリ。戦争をする必要があるのかと思うぐらい力の差が歴然。しかし、反撃に合うことも。すぐに撃退するも、その度にアメリカ兵たちが真剣に、容赦なくなっていくのがわかります。怖い怖い。
民間人は攻撃しない。そういう建前(決まり)があったのでしょうか。怪我をした子供を手当てしてくれとアメリカ兵に懇願するベトナム人の母親。手当てのためにヘリに乗せるアメリカ兵。他にあんなに殺しているのに・・・。
もともと、この戦争(南ベトナム対北ベトナム)は、アメリカとソ連の代理戦争。ベトコン憎しと言い分けじゃないのか。東京大空襲の時は、東京に焼夷弾が雨のように降ったという話を思い出します。
戦いより波が気になるキルゴア中佐。流れ弾は気にならない、近くで爆弾が破裂しても平気。波乗りをするためにナパーム弾で絨毯爆撃。森に隠れて攻撃してくるベトコンを一掃します。そして、有名なセリフ。
「朝に嗅ぐナパームの香りは最高だ」
が。
アメリカ騎兵隊が悪者。とまではいかなくても、前線の混乱や無謀、何のための弱いもの虐めだ感が溢れてます。
日本の学生運動やフォークソングって、こういうのに反対してたんだろうか? 自分は子供過ぎてわからなかったけど、ベトナム戦争って、ここまで酷かったとは。でも、こんなになってるとは、本国のアメリカ人も知らなかったんじゃ・・・って、あっこれ映画の話だった。
(^^;
この先、もっと酷くなっていきます。
プレイメイト地獄(2020-09-01)
哨戒艇を空輸するキルゴア中佐部隊のヘリ。ウィラード大尉たちはヌン川へ。この川の上流に、目指すカーツ大佐の王国があるのです。哨戒艇は小さなボート、小回りが利きそうです。武器は機関銃程度に見えるけど、大丈夫なのか?
乗組員は海軍兵4人。チーフは強面のリーダー。操舵を担当、無口。クリーンはまだ17歳。戦地の緊張と薬でハイ状態。演じているのはなんと無名時代のローレンス・フィッシュバーン(マトリックスのモーフィアス)、昔は痩せてたのね。あと、料理の修業をしていたシェフ、プロサーファーのランス。この二人は、あまり活躍しませんけど。
静かなヌン川を行く哨戒艇。カーツ大佐ってどんなやつ? 大佐の経歴を読み、思いを巡らすウィラード大尉。突然、哨戒艇に大きな波が。見るとクリーンがウェイクサーフィンしてます。
(・・;) 遊んでる、呆れるウィラード大尉。
途中、哨戒艇を降りジャングルを散策、ベトコンならぬ、トラに遭遇。死にかけるウィラードとシェフ。生のトラ、怖い。ここでは大自然もアメリカの敵です。
哨戒艇に戻り、ヌン川を進むと今度は川沿いに謎の施設が現れます。大きい。実はこれはアメリカ軍の補給基地。ウィラードたちは、すかさず燃料や食料を補充。大きいと思ったら、中になんとステージが。一行はショーを見ることを勧められます。このショーが紹介したいシーン、二つ目です。
はじまる前から会場は大盛り上がり。兵士たちの熱気で溢れます。
そこにプレイボーイマークのヘリが降臨、中年男がマイクを持って登場、挨拶を始めると会場からはブーイングが。
続いて、お待たせしました。右のドアからミス8月、左のドアからミス5月が登場。二人とも布地が少なめの衣装、プレイメイトです。そして、兵士たちを挑発するようにセクシーダンス。朝鮮戦争中、韓国で米兵を慰問するマリリン・モンローの話は有名ですが、これは・・・。
(+_+)
盛り上がったところで、ひとクラス上のプレイメイト、ミスバニーが登場。むっ、この人は私も好みかも!
カーボーイハット、水色のホットパンツが眩しいです。オモチャの鉄砲をバキュンバキュン。男どものハートを射止めます。会場の周りのフェンスには、ベトコン(男)が、かぶり付きで見ています。
(^o^;)男って・・・。
興奮してステージに上がり始める兵士たち。危険を感じた中年男はステージ上に煙幕。セキュリティが彼女たちを保護、ヘリコプターの中へ避難させます。飛び立つヘリ、しぶとくヘリの足に捕まる兵士二人。やがて川に落下します。
徒労。この煙に巻かれる感じ、どうやっても欲しいものは手に入らない。それが、アメリカにとってのベトナム戦争なんだと思いました。
疑心暗鬼地獄(2020-09-08)
ヌン川を上る哨戒艇。ジャングルは上流に行くほどに色濃くなり、その闇からいつ敵が襲ってくるかわかりません。
すると前からサンパン(小舟)が。民間人の船です。乗っているのは女子供も合わせて数人。放っておけ、やり過ごそうとするウィラード大尉。それをチーフが制します。武器の補給船かも知れません、船を調べないと。
命令に従って、素直に調べに応じるベトナムの人。しかし、船尾の奥のカゴを調べようとしたとき、それを止めようとする女。その動きにクリーンが反応。小船に向かってマシンガンを乱射します。え~~~っ!? まじ? なにやってんの? なんで?
( ゜Д゜)
無抵抗な村民を惨殺、皆殺し。舟を調べてみると、隠していたのは、ただの子犬でした。なんて事だ。
「気をつけろ、女が動いたぞ」
はっとする一同。しかし、女は重症。病院に運ばなければと言うチーフ。今度はウィラードが、それを制し、発砲。女の止(とど)めを刺します。驚く一同。
「だから、見過ごせと言ったのに」
と、吐き捨てるウィラード大尉。ネズミを操るだけじゃなかったのか。
(・・;)))
映画館でこのシーンを観たとき、館内に流れた、どよーんという空気が忘れられません。まさかの主役の暴挙で、一気に映画のシリアス度が増しました。アメリカに正義はない。そうこのアメリカ映画は言っているのか? それとも何をやっても駄目、閉塞感に助けてくれと言っているのか? 世界大戦に勝っても、国は幸福になれるわけじゃないようです。
この後、哨戒艇はさらにジャングルの奥地へ。そこでの戦いはさらに混沌。上官がだれかもわからず、作戦も知らず、相手も見えず闘う兵士たち。ベトコン側が有利に見えます。チーフが死に、クリーンが死に。死体だらけのヌン川を行く哨戒艇、その先にカーツ大佐の王国はありました。
地獄の黙示録地獄(2020-09-16)
川は波ひとつ立たない。王国入り口で、出迎えた多くのボート。現地の人? 大佐を慕い王国に加わった米兵? 顔がペイントされていて、よくわかりません。
王国と言っても、ちょっと岩を重ねただけのような。インファント島みたい。公開当時、川辺にある死体に本物があるって、ワイドショーで取り上げられてたのを思い出しました。中にスコット・グレン(羊たちの沈黙のジャック・クロフォード主任捜査官)もいるらしい。
カーツ大佐は見当たらず、代わりにカメラマンだというアメリカ人(デニス・ホッパー)が案内。大佐が出てくるのは更に後になります。突然、暗闇からスキンヘッドが、ぬっと登場するカットで、印象的です。しかし、その後も、大佐にはほとんど台詞もなく、その考えもわからないままに、ウィラード大尉は大佐を殺害。彼が後釜に座ったのかなぁ~という余韻を残し、この映画は終わります。
当初のシナリオでは、カーツ軍vsウィラード軍の戦闘シーンも予定されていたようですが、ちょっと尻窄みな終わり方。そこにはこの映画の制作自体の混乱という第3の視点、アナザーストーリーがあったのでした。(松嶋菜々子風w)
ベトナム戦争、この映画のストーリー、そしてこの映画の制作。あちこちブログを読んでいると、最後の制作自体が、一番混沌としてるような気がします。そして、驚いたことにその混沌は、コッポラの妻によって記録され、後にドキュメンタリー映画として公開されているとか。予見してたのか・・・。
この先は製作時の混沌エピソード(地獄の黙示録、撮影の地獄)を挙げていきます。
当初の予算は1200万ドル、撮影はの4ヶ月間の予定。しかし、結果は3100万ドル使い、撮影には1年半かかったそうです。ほぼ3倍か。またコッポラのこだわりで、編集に2年かけてるもよう。予算を使い果たすとコッポラはゴッドファーザーで儲けた私財を投入。おかげで映画は大ヒット、無事制作費は取り戻したのこと。
最後に出てきて、すぐに殺される主役のカーツ大佐。演じているはマーロン・ブランド。この評判が良くないです。彼のわがままに、スタッフは翻弄されたとか。
あまりに太ってスタジオ入り、台詞は覚えてこない。(これはゴッドファーザーの時も同じ)。仕方なく役柄の設定と、シナリオを変更したらしい。でも演出や配役にも口を出すため、その心労でコッポラが倒れる事態に。自我も肥大化してたのか、そんな風に見えないけどなあ。
でもその存在感は確かに凄い。他の役者だったら、映画がまとまらなかったのではないかと思います。我が儘でも敷居はクリアする。もちろん編集の力のありそうですが。
コッポラのこだわりも混沌の原因か。金と時間を湯水のように使っているようです。
驚いたのがナパーム弾投下のシーン。キルゴア中佐がサーフィンがしたくて、ベトコンが巣食う森を絨毯爆撃するのですが、どうみても本当に爆撃しています。お金かかるなぁ、失敗できないカットだなぁと思いましたが、実は映画で使われてるのはテイクツー。えっ!?一度失敗しているの? いい映画が撮れるはずだ。
ちなみにアメリカ軍の協力は得られなかったので、戦闘機などはフィリピン軍のものだそうです。
せっかく作ったセットが大半、台風で破壊されるトラブルも。撮影に協力しているフィリピン軍はゲリラとの戦闘のため、度々ヘリコプターを引き上げる。その度に撮影が中断。コッポラも疲れ果ててたとのこと。後に「この映画のテーマは何だ」と質問したら、コッポラは「撮っていて途中で分からなくなった」と答えたそうです。
それでもパルム・ドールを受賞、アカデミー賞8部門ノミネート。そこまで持ってくんだから、取りまとめの妙。逆にフランシス・コッポラ監督って凄い!と、思いました。・・・見習わなければ。
おわり
蘊蓄
1979年度のカンヌ国際映画祭で最高賞であるパルム・ドールを獲得。アカデミー賞では作品賞を含む8部門でノミネートされ、そのうち撮影賞と音響賞を受賞した。
映画の原案は、1902年に出版されたジョゼフ・コンラッドの小説『闇の奥』(原題:Heart of Darkness )である。当初は、1970年代初頭に、同じ南カリフォルニア大学の映画学科に在籍していたジョージ・ルーカスとジョン・ミリアスが共同で進めていた企画であった。しかし、当時はベトナム戦争が行われていた最中であり、その企画は通らなかった。後にルーカスが『スター・ウォーズ』を製作するにあたり、作品の権利をフランシス・フォード・コッポラに譲り渡したのが始まりである。
コッポラは、映画の製作初期段階から、音楽をシンセサイザーの第一人者である冨田勲に要請していた。しかし、契約の関係で実現には至らず、結局監督の父親であるカーマイン・コッポラが音楽を担当した。
(ウィラード大尉は)ハリソン・フォードの起用も検討されたが、『スター・ウォーズ』の撮影との関係により、最終的にマーティン・シーンに落ち着いた。なおフォードは、撮影の見学に来たときに端役として出演しており、その時の役名は「ルーカス大佐」となっている。
報道班ディレクターとしてフランシス・フォード・コッポラが、報道班カメラマンとしてヴィットリオ・ストラーロがカメオ出演している。
「プレイメイト・オブ・ザ・イヤー」役は、実際の1974年プレイメイト・オブ・ザ・イヤーであるシンシア・ウッド(英語版)、「ミス8月」役は実際の1976年8月プレイメイトであるリンダ・ビーティ(英語版)である。また、「ミス5月」役のコリーン・キャンプは、映画封切り後に1979年10月の『PLAYBOY』誌で写真を発表した。
ロケは、アメリカ合衆国とベトナム社会主義共和国との国交がないため、フィリピン共和国の熱帯雨林で行われた。また、アメリカ合衆国軍の協力が得られなかったため、映画に登場するF-5戦闘機やUH-1ヘリコプターは、全てフィリピン軍の協力に拠った。
途中、フィリピンを襲った台風によりセットが全て崩壊したことも撮影スケジュールの遅延に影響した。この時の台風の模様は撮影され、ストーリー上急遽役割が与えられた。
当初ウィラード大尉を演じる予定であったハーヴェイ・カイテルは、撮影開始2週間で降板し、新たに起用されたマーティン・シーンも、撮影途中の1977年3月5日に心臓麻痺で倒れ、一時生死の境をさまようほどの状態になってしまった。報道写真家役のデニス・ホッパーは、麻薬中毒でセリフが覚えられず、事あるごとにコッポラと衝突した。
主演のマーロン・ブランドが撮影当時極度に肥満していたため、物語の設定を一部変更する必要が生じたこともあった。また、ブランドは、キャスティングや脚本に対して自己中心的な主張をすることも多く(役作りにより体から強烈な臭いを発していたデニス・ホッパーと一緒に撮影されることを拒否した)、遂には監督であるコッポラが心労で倒れる事態にまで陥ってしまう。
制作発表時、ベトナム戦争やアメリカ及びアメリカ軍を批判的に扱った最初の映画として物議を醸したが、スケジュールの遅延やキャスティング面でのトラブル、コッポラの完璧主義によって、撮影と編集が異常に長引いてしまった。同様にベトナム戦争を題材にし、この映画の後から制作が始まった『ディア・ハンター』の方が先に公開されたほどである。
コッポラの妻エレノア・コッポラは、後に撮影手記『ノーツ – コッポラの黙示録』を出版した。当時の制作現場が、いかに「戦場」のようであったかが窺える記録映画となっている。
映画製作中には様々な困難があったにもかかわらず、公開後全世界で大ヒットを記録し、巨額の制作費を無事回収することが出来た。
1979年のカンヌ国際映画祭で未完成のまま出品され、『ブリキの太鼓』と共に映画祭の最高賞に相当するパルム・ドールを獲得した。授賞式の会場では、審査委員会の判断を批判するブーイングもあったという。
2001年には、53分の未公開シーンが追加された『地獄の黙示録 特別完全版』(原題:Apocalypse Now Redux )が公開された。この特別完全版では、台風により不時着したヘリコプターと、それに乗っていたプレイメイト達の幕間劇、フランス人入植者たちとの交流のエピソードなども復元された。
『地獄の黙示録』は、公開直後から映画に対する賛否両論が噴出した。映画評論家たちの間では、「ストーリーもあるようでないようなものである」「戦争の狂気を上手く演出できている」「前半は満点だが後半は0点」など、意見が分かれがちな映画である。
映画中では、アメリカ側におけるベトナム戦争のいい加減さを強調し、歴代アメリカ合衆国大統領(ジョン・F・ケネディとリンドン・B・ジョンソン)により拡大した、ベトナム戦争に対するアメリカ合衆国連邦政府への批判がみられる。例えば、サーフィンをするためにベトナムの村落を焼き払うヘリ部隊の指揮官、指揮官不在で戦闘をする部隊といった描写である。
映画の公開前に映画監督の長谷川和彦がコッポラにインタビューしている。長谷川が「この映画のテーマは何だ」と質問したら、コッポラは「撮っていて途中で分からなくなった」と答えたという。
撮影のストラーロ、編集のマークスは本作を「オペラである」と語っている。
キルゴア中佐の台詞である「朝のナパーム弾の臭いは格別だ」(”I love the smell of napalm, in the morning.”)は、AFIによる『アメリカ映画の名セリフベスト100』中第12位に選ばれている。
健康状態の優れない身体というカーツ大佐の設定は、肥満状態にあったブランドの体型に合わせて「物語そのものも変更した」とフランシスは述懐。撮影現場では、自身の健康管理不足や役作り不足に対する反省などなく、逆にキャラクター造形に対して一貫性のない自身の主張を現場で通すなど、ブランドの起用は混乱を生む要因のひとつだったと言われている。
当初候補だったスティーヴ・マックィーンは、『パピヨン』(73)での過酷な撮影に懲り、ジャングルでの撮影は引き受けられないと降板していた。
オリジナル版がカンヌで最初に上映されたときは6時間以上だった
北軍が篭る海岸線一帯にナパームを投下する場面について。何が凄いといって、じつはこのシーンにはテイク1があるということなのです。
<音響設計>(追記 2015年6月)
この映画は映画界で初めて「音響設計 Sound Design」という言葉が用いられた作品としても重要な価値があります。(NHKEテレ放送の「ハリウッド白熱教室」参照)(地獄の黙示録)
フィリピンにはフィルムを現像するラボがなく、コッポラは撮影をすべて終え、アメリカに帰るまで現像されたフィルムを見ることができなかった。
この映画は難解ではない。変に理屈っぽく観るからそう思うのだ。恐怖は人間を支配し、異常な状態へ追い込む。戦場で人間が勇敢になるのも、惨虐になるのも、奇妙なことに熱中するのも、すべて恐怖から避難するためだ。恐怖から逃れるためには、人間は何を考え何をするか分からない。戦場は地獄だから怖いのではない。戦場では時に地獄が天国に見えるから怖いのだ。──黒澤明
資料
原題 Apocalypse Now
英題 Apocalypse Now
惹句 魂を揺さぶる 2時間30分の旅
脚本 ジョン・ミリアス、フランシス・フォード・コッポラ、マイケル・ハー(ナレーション)
原作 ジョゼフ・コンラッド『闇の奥』
監督 フランシス・フォード・コッポラ
制作 フランシス・フォード・コッポラ
指揮 -
音楽 カーマイン・コッポラ、フランシス・フォード・コッポラ
主題 -
撮影 ヴィットリオ・ストラーロ
編集 リチャード・マークス、リサ・フラックマン、ジェラルド・B・グリーンバーグ、ウォルター・マーチ
美術 ディーン・タボウラリス
俳優 ウォルター・E・カーツ大佐 / マーロン・ブランド
俳優 ビル・キルゴア中佐 / ロバート・デュヴァル
俳優 ベンジャミン・L・ウィラード大尉 / マーティン・シーン
俳優 ジェイ・“シェフ”・ヒックス / フレデリック・フォレスト
俳優 ランス・B・ジョンソン / サム・ボトムズ
俳優 タイロン・“クリーン”・ミラー / ローレンス・フィッシュバーン
俳優 ジョージ・“チーフ”・フィリップス / アルバート・ホール
俳優 ルーカス大佐 / ハリソン・フォード
俳優 コーマン将軍 / G・D・スプラドリン
俳優 報道写真家 / デニス・ホッパー
女優 キャリー(プレイメイト)/ シンシア・ウッド
女優 サンドラ(プレイメイト)/ リンダ・カーペンター
女優 テリー(プレイメイト)/ コリーン・キャンプ
会社 アメリカン・ゾエトロープ
配給 日本ヘラルド映画
公開 1980年2月23日
上映 153分
国旗 アメリカ合衆国
言語 英語
費用 $83,471,511
収入 22億5000万円
「地獄の黙示録」ヘリコプター軍団襲来 Apocalypse Now (1979) Helicopter Attack Scene
Apocalypse Now (1979) – Army gets a visit from the Playboy bunnies
本編を観るには・・・
関連 ~ ベトナム戦争映画
参考・引用
地獄の黙示録 – Wikipedia
『地獄の黙示録』を生み出した、キャスト・スタッフの様々な交代劇とは? |CINEMORE(シネモア)
映画「地獄の黙示録」のプレイメイトと米兵達の名場面に使われた、「スージーQ」の原曲はデイル・ホーキンズ : K-UNIT 情報局
地獄の黙示録〜ジャングルの奥地に潜むクレイジーな静寂世界|TAP the SCENE|TAP the POP
CGなしの衝撃!「地獄の黙示録」リバイバル公開にあわせ、復刻本が限定販売! – SCREEN ONLINE(スクリーンオンライン)
WEB限定でザ・ドアーズの曲「The End」が使用された予告編が解禁!『地獄の黙示録 ファイナル・カット』 – シネフィル – 映画とカルチャーWebマガジン
地獄の黙示録 解説【ワルキューレの騎行】|fufufufujitani|note
サーフスポット確保のためのベトコン攻撃は、ワーグナーの「ヴァルキューレの騎行」にのって!? – Byron(バイロン)
夢心地で最後まで観れてしまう思いのほか静かな戦争映画-「地獄の黙示録 特別完全版 (1979/米)」 | 人生を彩る映画と演劇の感想&備忘録
『地獄の黙示録』(1979)パート1 小学生で観に行って撃沈。今までに6回ほど観ていますが…。: 良い映画を褒める会。
『地獄の黙示録』(1979)パート2 暗殺指令遂行のためカンボジアに向かったウィラードは何を思う?: 良い映画を褒める会。
地獄の黙示録
『地獄の黙示録 特別完全版』 「キプリングとエリオット」 : 時計じかけのフルメタル・シャイニング
『地獄の黙示録』の心臓 ②「オリジナル版」と「特別完全版」 : 時計じかけのフルメタル・シャイニング
『地獄の黙示録』の心臓③ 「封印されたエンディング」 : 時計じかけのフルメタル・シャイニング
『地獄の黙示録』の心臓④ 「極端な偏見で終わらせろ」 : 時計じかけのフルメタル・シャイニング
ポンコツ映画愛護協会『地獄の黙示録』
更新履歴
4稿)2020/09/08、シネマドローム、疑心暗鬼地獄
3稿)2020/09/01、シネマドローム、プレイメイト地獄
2稿)2020/08/26、シネマドローム、ワルキューレの騎行地獄
初出)2020/08/18、シネマドローム