★[感想]狼たちの午後

 感想記事の抜粋


原題 Dog Day Afternoon
惹句 暑い夏の昼下り 全米の注視をうけて演じられた--あまりにも突飛な事件
監督 シドニー・ルメット
俳優 ソニー/アル・パチーノ
俳優 サル/ジョン・カザール
俳優 モレッティ/チャールズ・ダーニング
女優 シルビア/ペニー・アレン
蘊蓄 オープニングで流れる曲以外、この映画には音楽がない。
蘊蓄 殆どのシーンは役者たちのアドリブによって撮影されている。
アル・パチーノの演技に目が離せない!狼たちの午後の感想です。の感想です。

 

作品紹介

1972年に起きた事件をもとに製作されたクライムムービー、監督は社会派シドニー・ルメット。
ゴットファーザーのアル・パチーノとジョン・カザールがチンピラ役を好演。
アカデミー賞では6部門にノミネート、脚本賞を受賞。
 

  

物語

押し入ったのはマンハッタンの小さな銀行。準備は万全、30分の仕事のはずが、その計画はないに等しかった。あっと言う間に包囲されたソニーとサル。マスコミは彼らを生中継、やがて二人は英雄になるのだが…。
 

感想

か、金がない!

銀行に現われた3人の男。1人は大事そうに紙の箱を抱えています。リボンがかけられた細長い箱。花束のプレゼント?ベビーカーが外に出るのを確認すると、男は箱からライフルを毟(むし)り出した。

「騒ぐな、静かにしろ!」

決意したように凄(すご)む男。2人目は頭取に近付き銃を突き付けてます。その時3人目の男が呟(つぶや)いた。

「やっぱりオレにはできない!」

えっ!? 呆気(あっけ)に取られる男、そして行員達。仕方なく仲間を外に逃がす男。計画はそう、初めから狂い出します。

度々五月蝿(うるさ)く鳴る電話に、いつも通りの対応をさせられる支店長。銀行のことは詳しいと嘯(うそぶ)く男。やがて金庫の金は既に本社に送金済、1000ドル程しか残ってない事がわかります。

ギャグではありません、話はあくまでシリアスに展開。再び電話を取った支店長が男に話しかけます。今度は君への電話だ。オレに?何がなんだかわからない男。電話の相手は彼に告げます。

「…君達は完全に包囲された。」

孤独な英雄

事件は1972年、実際に起きたそうです。Truth is stranger than fiction.(事実は小説より奇なり)。頼りない犯人、ソニーとサル。リアルな展開にどんどん引き込まれてしまいました。
m(・_・;

特に唸ったなのは…。

プレゼントの箱からライフルを出す時のソニーの慌てぶり。
銀行の床をワックスに滑りながら走るところ。
家族から人質にかかってきた、いつ帰れるかという電話。
守衛を解放する時、警察が犯人と間違え撃とうとするところ、それに怒る犯人、人質、野次馬。
テレビに電話出演して英雄になり、野次馬の前に出てシュプレヒコール、声援を受けるソニー。そこに人質の恋人が現れ、襲い掛かるところ。野次馬にお札をばら撒くところ。
犯人と人質の間に連帯感が生まれて、人質は自分から銀行に戻ったり、犯人の銃で遊んでみたり。
ピザを届けたピザ屋は、明日から俺はスターだと叫び出すところ…。

でも一番は孤独な主人公、ソニー。残った相棒、サルはいつ暴れるかわからないし、何もわかってないよう。連絡を受けた奥さんはただ機関銃のようにしゃべるだけ。苛々(イライラ)の中、孤軍奮闘するソニー。

そして警察に要求した「会いたい人」。やって来た男(ゲイ)を見て、やじ馬や警官達が大笑い、万人の前で恥部をさらけ出されるソニー。銀行強盗の動機は彼女(?)の手術代だったのに。追い詰められた孤独な男、アルパチーノがいいです。

海外逃亡を図り、人質と共に車に乗りこむソニーとサル。最後の飛行場のシーンは緊迫感いっぱい。運転手の刑事が一瞬の隙をついてサルを射殺。こめかみに銃を突き付けられ、ソニーも動くことができません。解放され家族と抱き合う人質達。もう誰もソニーを気にするものはいません。

70年代からのメッセージ

日曜洋画劇場がまだ淀川長治の解説だった頃。まだアルパチーノとダスティンホフマンの区別も付かなかった頃。私はテレビでこの映画を見ました。今回DVDで再度鑑賞、やっぱり今見ても面白い。あの頃は銀行強盗の英雄扱いや、ホモ自体に驚いてましたが…。

シドニー・ルメットは「12人の怒れる男」「セルピコ」「評決」などの社会派監督なのだとか。またこの映画が公開されたのは1975年。「カッコーの巣の上で」や「JAWS」とアカデミー賞を争ったようです。前年には「ゴットファーザーPart2」「ハリーとトント」「カンバセーション…盗聴…」、翌年には「タクシードライバー」「大統領の陰謀」「ロッキー」…。

まだ映画にメッセージが溢れてた頃、心に残るのはそれなりの理由があるのかもしれません。まとめてこの頃の映画を見てみようかな。

蘊蓄

1972年8月22日にニューヨークのブルックリン区で発生した銀行強盗事件を題材にしている。
事件の犯人の容姿がアル・パチーノに似ていたため、パチーノが主演に選ばれた。
ソニーが野次馬に向かって叫ぶ「アティカ、アティカ」。これはアッテイカ刑務所で実際に起きた暴動のこと。刑務所内での過度の抑圧と差別待遇が原因だとされる。
サル役のジョン・カザールは《ゴットファーザー》ではフレディ、マイケル(アル・パチーノ)の兄役
原題のdog dayは暑い日と言う意味。ニアンスがだいぶ変わるが土用のこと
銀行のセットはブルックリンの倉庫を改装したもの
銀行強盗の映画なのに銃声はたったの2発
オープニングで流れる曲以外、この映画には音楽がない
殆どのシーンは役者たちのアドリブによって撮影されている。
物語の設定では真夏だが、実際の映画撮影は秋頃に行われたのでスタッフは気候の問題に対処する必要に迫られた。役者たちは吐く息が白くならないように、口中に氷を含んで演技をした。
「アッティカ!アッティカ!」(原文:Attica! Attica!)は2005年にアメリカ映画協会によって名台詞ベスト100中第86位に選出された。
強盗計画は失敗したが、犯人は映画の収益の一部を供与され、その費用を恋人の手術費用としてプレゼントすることができた。

資料

原題 Dog Day Afternoon
英題 Dog Day Afternoon
惹句 暑い夏の昼下り 全米の注視をうけて演じられた–あまりにも突飛な事件…だがそれはまぎれもない事実だった!
脚本 フランク・ピアソン
原作 P・F・クルージ

監督 シドニー・ルメット
制作 マーティン・ブレグマン、マーティン・エルファンド
指揮
音楽
主題
撮影 ヴィクター・J・ケンパー
編集 デデ・アレン
美術

俳優 ソニー / アル・パチーノ
俳優 サル / ジョン・カザール
俳優 モレッティ(部長刑事)/ チャールズ・ダーニング
俳優 シェルドン(FBI)/ ジェームズ・ブロデリック
俳優 レオン(ソニーの妻、ゲイ)/ クリス・サランドン
女優 シルビア(行員)/ ペニー・アレン
女優 ジェニー(行員)/ キャロル・ケイン
俳優 マルベニー(支店長)/ サリー・ボイヤー
俳優 マーフィ(FBI)/ ランス・ヘンリクセン

配給 ワーナー・ブラザース
公開 1976年03月06日
上映 125分
国旗 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語

費用
収入 $50,000,000

第48回アカデミー賞(1975年度)、脚本賞:フランク・ピアソン
英国アカデミー賞(1975年度)、主演男優賞:アル・パチーノ、編集賞:デデ・アレン
ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞(1975年度)、助演男優賞:チャールズ・ダーニング
第1回ロサンゼルス映画批評家協会賞(1975年度)、作品賞:『狼たちの午後』(『カッコーの巣の上で』と同時受賞)
 監督賞:シドニー・ルメット、主演男優賞:アル・パチーノ

 


 

本編を観るには・・・

参考・引用

狼たちの午後 – Wikipedia
腐女子の映画豆知識16 「狼たちの午後」の真実~事実は知らぬが仏? | シネマの万華鏡
『狼たちの午後』 シドニー・ルメット 1975 : なにさま映画評 →→→→→ Made-to-Order
もっと映画な生活! 『狼たちの午後』 銀行強盗失敗!逃げられない!極限状態の心理を描く社会派映画
『狼たちの午後』あらすじとネタバレ映画批評・評価 | MIHOシネマ
『狼たちの午後』 シドニー・ルメット 1975 : なにさま映画評
人生論的映画評論: 狼たちの午後('75)    シドニー・ルメット
「狼たちの午後」(1975米国) : 活動写真雑記帳<映画備忘録>
ストックホルム症候群 – Wikipedia

更新履歴

5稿)2021年06月08日、シネマドローム
4稿)2016年10月30日、シネマドローム
3稿)2015年03月18日、シネマドローム
2稿)2009年10月24日、シネマパレード~隼
初出)2005年02月14日、東京つまみ食い
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