1946年公開の白黒映画。映画はストーリー、映像はそれについてくるものなのだなぁ。素晴らしき哉、人生! の感想です。
 

 

作品紹介

夢かなうことなく過ぎてゆく人生、破産の危機に追い込まれた男。自殺を考える彼を天上世界から見守るものがいた。
1946年公開。監督はフランク・キャプラ、主演はジェームズ・スチュワート。
アメリカでは今でもクリスマスにテレビ放映される名作中の名作。
 


 

感想

2時間強の白黒映画、届いたDVDは吹き替えがない字幕版。いくら名作の誉れ堅い作品でも、退屈すると思いきや、然(さ)に非(あら)ず。テンポよく話が進み、終盤は画面から目が離せなくなります。最後、ベイリー家のクリスマスパーティに集まる人々に、涙が止まらなくなりました。目の中でゴロゴロしてたものが、全部流れ出たようです。

物語は天上界での会話から始まります。羽根のない2級天使が受けた使命は、自殺しようとしている男を思い止まらせること。天使にその男について説明するという流れで、それまでの彼の人生が語られます。
1946年公開のこ映画、このシーンでは絵に書かれた(ような)星が会話をします。紙芝居でもみるかのような稚拙さ、その時代の製作風景を伺わせます。

自殺しようとしている男の名はジョージ。回想は彼の少年時代から始まります。田舎町に暮らす彼は、世界中を旅するのが夢。父親は住宅金融会社の社長。町を牛耳るポッター氏に対抗し、町の貧しい人達に、低金利で資金を提供しています。
ジョージは大学へ、そして世界に飛び出そうとします。しかし旅立ちの日、父が倒れ、やむなく会社を継ぐことに。のちに後を継がせようと思っていた弟は、大学で結婚相手を見つけ、別な仕事へ。ジョージの結婚の日、大恐慌で会社の危機に、旅行のお金は運営資金に結局ハネムーンすら行けません。会社が軌道に乗ったと思ったら、今度は叔父が小さな間違いを、倒産の危機に直面します。自分の不運を嘆き、家族に当たり始めるジョージ。橋から身を投げようとするところで、2級天使が登場します。私なんて生まれて来なければよかったんだと嘆くジョージに、天使は彼を本当に彼のいなかった世界へと連れて行きます。

ベットフォード・フォールズとポッターズヴィル。ベットフォード・フォールズはジョージのおかげで、貧しい人達が自分の家を建て繁栄。しかし、ジョージの生まれていない世界ではそこは荒れ地のまま。逆にポッターが牛耳るポッターズヴィルは大きく繁栄。街に溢れる酒場、娼婦にギャング。みなやる気を失い、虚ろな顔、そしてすぐに怒り出します。バックトゥザフーチャー2、ビフの支配している街のよう。
もし、彼が子供の頃、弟を助けなければ、もし、薬屋のバイトであの薬を届けていたら、もし、彼が会社を継がなかったら、メアリーを妻にしなければ…。天使は人はそれぞれの役目がある、君のおかげで世界は大きく変わったんだよ伝えたかったよう。ジョージがもう二度と生まれて来なければよかったなどと言わないと叫ぶとそこはもとの世界中でした。そして…。

ジョージは家に帰り、子供たちの顔を見て安心します。しかしメアリーの姿がない、彼女は街の人々に夫の危機を伝え、寄付を募ってまわっていたのでした。お金を持ち寄る街の人々。みなジョージを心配し訪ねてきたのでした、無事な姿をみて次々に支援を申し込む街の人々。そこに戦場の英雄となった弟が帰ってきて…。
そして全員(会計監査員まで)で大合唱。天使がジョージに残したメッセージは、《 友あるものは敗残者ではない 》。鐘が高らかになり、まさにハッピーエンドでの幕となります。

このエンディングは簡単に予想できそうなものですが、私にはできませんでした。それは私の中のポッター氏のせい。ジョージが自殺を考える前、彼がポッターを訪ね、援助を乞う場面があります。映画の中のポッターは、ここぞとばかり、こう言います。
~おまえの大好きな貧乏人どもに、助けをもとめたらどうだ~と。この時、私も(そしておそらくジョージも)それは無理だと思いました。助けの手を差し伸べ感謝されても、こちらが困ってるときは見向きもされない。あの恐慌の時だって…。
ジョージもポッターも実はあまり変わりはないのかも。ラストで誰も寄付をしてくれなければ、ジョージは一変、ポッター2世として街を牛耳ったかもしれません。
 
 


 

 

 
 
この映画を観ようと思ったのは、町山智浩さんの《〈映画の見方〉がわかる本80年代アメリカ映画カルトムービー篇 ブレードランナーの未来世紀》を読んだから。’80年代のカルトムービーを解説した本ですが、その冒頭にこの映画の話がでてきます。(アメリカでは今でもクリスマスの深夜にはテレビ放映されてるらしい)
この本では冒頭にデヴィッド・クローネンバーグのコメントを掲げ、この映画はただの心暖まる話ではないと続きます。今(1950年代のアメリカ)は、ジョージの観た自分のいない世界の方が現実、映画が見せている現実世界の方が夢なのだと…。

でも私の感想は、やっぱりこの映画はハートウォーミングなコメディ。そう思うし、そう思いたい。人生って素晴らしいんだと思わせてくれる映画だと。映画の中の世界(天使の見せる世界も含め)は現実ではありません。何しろ天使が出てくるんですから。

ただこの映画の舞台が現代だったらどうだろう、今年製作の映画だったら…、鼻持ちならないという感想だったかも。公開当時、この映画は興行的に失敗したらしい。主人公の素直な、剥き出しの感情を同じ時代を生きる人としてみるのが辛いのか。古くなるということはそれ自体が、映画にとって、大きくプラスになることなのかもしれません。
 
 

薀蓄

映画監督のスティーヴン・スピルバーグは、大好きな映画の一本であると語っている。
映画監督の黒澤明が雑誌文藝春秋で選んだ「黒澤明が選んだ100本の映画」のうちの一本である。

 
  


 

 

資料

原題:IT’S A WONDERFUL LIFE
コピー:―
監督:フランク・キャプラ
脚本:フランセス・グッドリッチ 、アルバート・ハケット、フランク・キャプラ
原作:フィリップ・ヴァン・ドレン・スターン
制作:フランク・キャプラ
製作総指揮:-
音楽:ディミトリ・ティオムキン
主題歌:-
撮影:ジョセフ・ウォーカー、ジョセフ・バイロック
編集:ウィリアム・ホーンベック

ジョージ・ベイリー / ジェームズ・スチュワート
メアリー/ドナ・リード
ポッター/ライオネル・バリモア
クラレンス(2級天使)/ ヘンリー・トラヴァース

配給:RKO
公開:1954年2月6日
上映時間:130分
製作国:アメリカ合衆国
言語:英語

制作費:2,857,000ドル

1946年(第19回) アカデミー賞 ノミネート
 作品賞
 主演男優賞 ジェームズ・スチュワート
 監督賞 フランク・キャプラ
 編集賞 William Hornbeck
 録音賞 John Aalberg
1947年(第4回) ゴールデングローブ賞
 監督賞 受賞
1990年 アメリカ国立フィルム登録簿 新規登録作品

It's A Wonderful Life – Trailer – YouTube


   1940年代日本公開の映画一覧はこちら(作成予定)   

 

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参考・引用

素晴らしき哉、人生! – Wikipedia
『素晴らしき哉、人生!』は白黒映画だけど、涙が出てきた良い映画。 | My Life is Moive – 映画のような人生を -/おすすめ映画レビュー感想評価ネタバレ
「素晴らしき哉、人生!」|座右のシネマ
淀川名画撰集 – 素晴らしき哉、人生!
『素晴らしき哉、人生!』の魅力的な裏話・トリビア7選!【幻のエンディングが存在した!?】 | ciatr[シアター]
 
 


 

更新履歴

3稿)2017年12月13日、シネマドローム
2稿)2015年03月25日、シネマドローム
初出)2006年11月20日、東京つまみ食い