◆ 七人、財布を拾う
● お決まりのコース、ぶらり丸の内~銀座の週末。美味しかったけど、後半が残念だったかなぁ。TOKIAで食べた中華を話題に、国際フォーラムを抜け、有楽町へ。
《 さっき言ってたモンブランを食べに行こうよ 》
そう言い終わらないうちに、横からKさんの驚きの声。
《 あっ、これは!! 》
ピクリ、蘇る厭な記憶。今度は銀座で引ったくり!? いやいや、落とし物でした。
(^。^;
Kさんが拾ったのは長財物、手に取るとズッシリと重たいです。警察に届けなきゃ、交差点のところに交番があるよ。Kさんもあの事件を思い出したよう。被害、過失の違いはあるにしろ、大事なものを無くした時の気持ちを痛感。例えそれが他の人でも、一刻でも早くその気持ちを払拭(ふっしょく)してあげたいKさんです。
● 財布は若い女性のもののよう。革の白地に刺繍でかかれたヘタウマ図柄。ぎっしり入っているのに崩れない型、財布だけでも高そうです。中を見るのは失礼。そのまま交番に持って行こう、モンブランはお預けということに。けっこう遠いなぁ、やっと着きました。交番前、入ろうとすると、
えっ!? 行列!?
暮れの銀座。きっと、いろんなことが起きているんだろうなぁ。道を聞く人の次はタクシーの運転手さん、落とし物を届けてます。そういう人が多いんだね。やっと自分の番に。
《 どうなされましたか~ 》
財布を拾ったというと、調書を取るというお巡りさん。あらら、けっこう面倒そう。それにしても腰の低い銀座の警察官(ひと)。かといって丁寧過ぎない受け答え。接客のプロのようです。
● 調書は住所、氏名から。高架下の、大通り沿いで、西銀座デパートが・・・。いつも歩いているのに、いざとなると拾った場所の説明に戸惑います。壁に貼ってある地図が活躍。なぜ机の上にはない?と思ったら机の上の電話がなって調書は中断。しまった、もうモンブランがタイムリミットなのに…。
(x。x)
外周りから戻ってきた警官が、駐車タクシーを注意。いやいや、落とし物を届けているんだよと運転手。それならよしと警察官。
(^_^;
次はお財布の中身を確認。お札と小銭、種類別に素早く分け、総額の確認を求めるお巡りさん、大変だなぁ。財布の中にお金が残っていないかも確認させられました。何かあった時に、ネコババしてないことの証明にするんだろうか。金額は数千円。でもその他にカードやら身分証やら、悪用されたら大変なものばかり。Kさんに見つけてもらって、本当に運のいい人です。
突然、お巡りさんが真顔になりました。難しい言い回しでしたが、落とし主が見つかった時、お礼どうするかということらしい。
《 辞退はできますか 》
というと、いらないということですね? ちょっとホッとしたようなお巡りさん。ここもトラブルが多い点なのか。次に聞かれたのが、落とし主が、お礼をしたいと言ってきた時に自分の情報を教えていいかということ。不可にしました。
● もう10時近く、このまま帰ろうか。交番を出るとそのまま地下通路へ。落とし主は今頃、気を揉んでいるだろうね、早く警察に問い合わせるといいね。するとKさんが、こんなことを。落とし主は50代の女性。銀座の一丁目に住んでいる。電話番号もあったから、すぐに警察から持ち主に電話がはいる…。
《 えっ!なんでわかるの? 》
身分証の情報が見えたらしい、さすが目敏い。どこぞのご令嬢かと思ったら、そんな年配の人だったんだ。たったひとつの真実見抜く、見た目は子供、頭脳は大人な名探偵だったらわかったかな?しかし、銀座1丁目在住とは…。
クラブのママ?
なかなか面白い。地下鉄を待っているとケータイがブルりました。なんだろう、この番号? あれ、連続で3回も着信してる。折り返してみると、さっきの交番から。交番の電話番号は110じゃないのか。
《 申し訳ありませ~ん、財布の奥から10円玉がでてきまして。もう一度、交番に来て頂くわけには行きませんか? 》
…それは、ちょっと。
(+。+)
もう電車に乗るので。電話中に電車が来て一台見送り。良いことをするには、効率が悪い世の中だなぁ。
● まだまだ話は続きます。翌々日。見たことのある番号から電話が。
はぁ、えっ!? 落とし主が見つかった!
良かった良かった。どうしてもお礼がしたいから、連絡先を教えてくれと言っている。なるほど。喜んでいるんだったらいいか。銀座のママさんの声も聞いてみたいし。というわけで了解。ケータイにかかってくるのかなぁ。
そのまた翌々日、家に帰ると私宛てに小包が。銀座のデパートの包み、宅急便のラベルには洋菓子と書いてあります。中に財布のお礼ですとのメモが。落とし主からだ。電話ではなく、直接お礼を届けたわけね。
それにしてもずいぶんと大きい。大きな袋は、上をガムテープで止めてあります。デパートから贈ったにしてはハンドメイド。なんか不思議。中には箱が2つ。バームクーヘン?と思ったら、パンでできた大きなドーナツ。天使のチョコリングというものらしい。
直径はラーメンの丼ほど。包丁で切り分けると、パンの中にチョコレートが点在してました。一口食べて…、これは美味しい!!
d(^~^)
ただ、ちょっとパンが乾いている感じ。鮮度が落ちているのかな…。一度、箱を開けている?宅急便の袋のガムテープ、箱の歪み蓋を止めてあったセロテープの色、乾いたパン、銀座のママと思われる贈り主…。
迷探偵、七人の推理がフル回転。こ、これは!?
これはクラブの客のお土産を、ママが使いまわしたものでは。あの財布も客の貢ぎ物だったのか?
宅急便のラベルを捨ててしまったので、連絡先もわからない今。お礼のお礼も出来ず。そして天使のチョコリングの入手経路もまた闇の中です。
( この話は 2010年12月27日に、生まれてくる日を間違えた にアップしたものです )
◆ 更新記録 2016年04月03日 ~ 2016年04月09日
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◆ タイトルの言葉
● D坂の殺人事件、重要な証言をするアイスクリーム屋の説明です。クレップシャツって何!? この証言で鍵のない密室ができているという話。大正時代の話だけど、新しいなぁ。
● 他にも自動電話とか、冷し珈琲とか、味わい深い単語を多く発見。これから時代は大正だなぁ。
● 読むきっかけになったのは、BSプレミアムの「 シリーズ江戸川乱歩短編集 1925年の明智小五郎 」。感想は こちら に書いております。
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