箱根旅行のレポート、6話め
◆ロシナンテの嘶(いなな)き
一騒ぎ終わって、箱根の夜。部屋に戻って、気の早い虫の音(ね)に耳をすませ…ってことはこのメンバーではありません。
(^_^;
宿のカラオケはなしということ(人が来ないので休み)なので、外に繰り出すことに。近くの飲み屋まで、ボックスワゴンで運んでくれるとのこと。はだけた浴衣を脱ぎ捨て、軽装に着替え。
「あれ~N籐さん、なんて派手なトランクスはいてるんですか!」
荒れる蒼い波の上に大きく赤く《湯》文字。ドンキホーテで買ったとか、K村さんが呆れます。それどころじゃないよ、さぁ行くよ、行くよ~。乗り込んだワゴンは細い道をクネクネ、すぐに繁華街に出ました。でも箱根湯本の町は質素、新宿と比べてはいけません。
数件並ぶ店のひとつ、クラブ順子へ。そう、ついにあの夜の話を書く時がきたのです。
(;^_^A
◆嵐の前の静けさ
家の近所にもありそうな、こじんまりとした店、クラブ順子。おばさんが二人、みんなを出迎えます。彼女が順子さんかな。カウンター席が二つ、三つ。ボックス席も数えるほど、お客は誰もいません。深紅の羅紗のソファーが場末の酒場を演出します。…静かだ。
2時間、飲み放題で3,000円。N藤くんがホテルで決めた額を確かめています。Dukeさんは部屋で寝てるので、今は六人。と思ったら、あれもうN藤くんがいない?なにやら携帯が鳴ったらしい。
ウィスキーを水割りで。順子さんはもう一人の女性とカウンターでつまみの用意、女手ひとつで育てた息子が、やっと今年独り立ちして…という年かなぁ。
結局お酒を作ってくれる女性もなし、そういう場合は事前に予約して、伊豆辺りから呼ばなきゃいけないらしい。S田さんがそっと耳打ちしてきます、「七人さん、早めに退散するとしますか」
三連休の初日でこれじゃ、経営は成り立つのだろうか?《さおだけや》の話を思い出す私。
(^_^;
パラパラとカラオケが入ります。同好会(カラオケ大魔王)なら、テーマを決めもどんどん曲が入るんだけどなぁ。何を歌えばいいのだろう、今この場面に合った曲って一体…。《昭和枯れすすき》でも入ようかと思ったら時、ほかのお客が入ってきました。
◆台頭する新勢力
結構な大人数、十二、三人といったところ。鳶(とび)職の人のような裾が広がって、足首でキュッと絞ったニッカポッカ、ロング八分。タンクトップ、頭にバンダナを巻いてる人も。新たな男の集団。にぎやかそうな人達は奥のボックス席へ。
(-.-)y-゜゜゜
互いに牽制しあう七人組と鳶職組。しかし次第に現場が机仕事を圧倒、まとめて曲が入ります。幹事らしき男は短髪、タンクトップから延びる筋肉質な腕。マイクさばきも軽やかに、歌うのは90年代J-POP。しかし、これが巧い!シャウト系だけでなく、バラードまでこなすなんて!!次第にボックス席から離れ、カウンター席の前へ。そこがステージに変わります。後に続いたバンダナ頭の後輩も巧い巧い。やばい、これは組の存亡にかかわる。
(>_<)
この場で歌う曲は…、この場で歌う…、この場で…。番号を書いた紙をカウンターへ。順子さんが頷(うなず)きます。
◆箱根 slamin’ night
数曲後。静かに始まる前奏、シンセ音のエコーがまわりを幻惑します。ドラムが刻んで、それを引き継ぐトランペット。曲が一変、ダンサブルなナンバーに。マイクを手に立ち上がろうとする私。タンクトップが手招きで、ステージへと誘います。
もちろん!
突然、現れた謎の男に鳶職組の面々の好奇の目。それは判るけど七人組まで驚いてどうする?
(^_^;
歌い出しはけだるい呪文。
~OLY OLY OLY OH! YELY YELY YELY YEAH!♪~《WON’T BE LONG/バブルガム・ブラザーズ》。
こういう時は観客を巻き込む、掛け合いソングに限る。バブル期のパワーで対抗だ。でもやばい、やっぱりちょっと恥ずかしいのか、上擦(ず)る声。
だったらと腹の底から~足りない頭なら~知恵を盗みゃいい♪~と訴えて、これはどうかだと~WON’T BE LONG!~。それに~WON’T BE LONG!~と返ります。
おぉ、のってきた!!~もうすぐさ、届くまで~♪とすかさず応酬。そしてもう一回。~WON’T BE LONG!~で、~WON’T BE LONG!~だんだんと大きくなる声に。ヒュー。
( ^_^)/□☆□
原曲の良さに助けられ、長い曲を完唱できました。迎えるタンクトップと肘をがっちりクロス、バンダナと抱き合ってました。よし、突破口は開いた。後のことは頼んだぞ、ぐふっ(殉職)
\(__ )
◆アルトでデュエット
そして歌合戦の始まり。電話から戻ってきたN藤くんは《Say Yeah! もっとミラクルナイト/モーニング娘》をエントリー。普段の2オクターブは高い声で熱唱、驚きの声の中、(チャゲアスではなく)そっちかよと声も。と思ったらまた電話、どうやら彼女ともめてるらしい。
I上さんは《夏を待ちきれなくて/TUBU》をチョイス、歌い終わるといつも間にか鳶職組のボックスに。こら~!私の歳とか七人組の機密を漏らすのではなぁ~い。
\(>< )
でもお陰であちらは衛生陶器のT社の人達とわかりました。馴染みのお客さんらしき人が、入ってきてこの状況に驚きの声を上げます。O保さんが力強くを《長渕剛》を歌い上げると、出ましたK村さん《季節の中で/松山千春》。
その選曲に青春時代を思い出したか、ついに鳶職組の大御所が登場。順子ママとのデュエットの始まりました。《銀座の恋の物語/石原裕二郎、牧村旬子》。
~心の底まで しびれる様な♪~その声に盛り上がる鳶職組。そして順子ママの番、~誰にも内緒で しまっておいた♪~
おぉ、なんて…なんて…低い声。
…(^_^;
アルトな歌声にひとり大いに受けてると、ここで時間となりました。鳶職組の面々に惜しまれながらの終了。道路に座り込んで電話をしているN藤くんを拾って、迎えにきたワゴンで宿へ。どうなる事かと思った二次会だけど、ここまで盛り上がっるとはねぇ~と一同。長い長い一日もようやく終わりの時が近づきました。
(^^)
次回、大団円へ
<予告>
次回はいよいよ最終回。まだ書きたいことは盛り沢山、一頁に内に収まるかちょっと心配。でもオチの言葉は初めから決めてあります。
(^。^)
この記事は 2006年05月22日に 東京つまみ食い にアップしたものです。
旅行場所:箱根
2稿)2017年09月05日、街角アイキャッチ
初稿)2005年10月03日、東京つまみ食い