【蘊蓄】
堤 幸彦(つつみ ゆきひこ、1955年11月3日 – )は、日本の演出家、映画監督。オフィスクレッシェンドの取締役。三重県四日市市生まれ、愛知県名古屋市千種区出身。活動初期は、堤ユキヒコ名義を使用した。
アシスタントディレクター時代は、仕事ができず立っているだけだったので「電信柱」というあだ名をつけられる日々だった。
堤の名を一躍世間に知らしめたのは、日本テレビで放送されたドラマ『金田一少年の事件簿』(1995年、堂本剛版)。その後『ケイゾク』『池袋ウエストゲートパーク』『TRICK』『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』シリーズ等、独自の演出によってヒット作を世に送り出す。
大作映画を多く手掛けるものの長らく日本の主要映画賞とは無縁であったが、2015年に『天空の蜂』『イニシエーション・ラブ』の異なるタイプのエンタメ作品2作を手がけた手腕が評価され第40回報知映画賞監督賞を受賞した。
映画とテレビドラマの世界の双方に新しいシステムを取り入れたとされている。映画の撮影においては、監督はカメラの横で指示を出すのが常であるが、堤は別の場所にテントを設置し、その中でモニターを通して撮影の指示を出し、その場で映像を編集して俳優にも見せる。こういったやり方は撮影が合理的に進み、プロデューサーや俳優とイメージを伝えやすくコミュニケーションが取りやすくなるという。
他方、テレビドラマの現場では、それまでのテレビ局のスタジオ収録を中心とした撮影から一転して、オールロケの撮影にこだわっている。予算が増大するためカメラを手持ち1台に抑え、カメラ数が少ないことによる画面の単調さをカバーするためアングルに変化をつけた斬新な演出を生みだした。また、ドラマの演出にバラエティ番組のような効果音を取り入れた。この変化は以後の日本のテレビドラマ全体に大きな影響を与え、「堤以前・堤以後」と言われている。
撮影の2時間前には現場に入り、イメージの確認作業をすることを常としている。その際、当日の雰囲気などを反映してカット割りをその場で変更することもあり、堤のチームではこれに即座に対応できる体制を持っている。
助監督時代の経験から、黒板製のカチンコを使用すると画面にチョークの粉が飛び、カチンコ係が責められて撮り直しになるという不合理でありながら伝統として続いていた習慣を排し、「ピカンコ」というボタンを押すと光る道具を作り使用するというシステムを作り、助監督の負担を合理的に軽減した。2010年代以降においては、映画撮影におけるフィルム撮影の衰退とデジタル化に伴い、カチンコをはじめこういった用具そのものも廃れてゆく傾向にある。
(堤幸彦 – Wikipedia)