★ルパン ~ 入り口

銀座 ルパン


 

案内

 
1928(昭和3)年、創業の老舗バー
太宰治、永井荷風、泉鏡花、菊地寛、直木三十五、坂口安吾、遠藤周作、開高健、野坂昭如。文士、文化人に愛されたバー。カウンターで寛ぐ太宰治を林忠彦が撮影した写真が壁に掛かっている
ヤチダモの一枚板でできたカウンターに鉄脚の椅子。昭和11年から改装していない店内は、雰囲気も当時のまま
お薦/チャーリー・チャップリン(女性向き)
 

地図

 


  

感想3

 
暮れも押し詰まって30日。今日はちょっと早いから、また5517(バー)に寄っていこうか。三笠会館まで行って休みと知らされます。残念。もう少し飲みたい気分、久しぶりにルパンにしようかな。
 
バーの良さ、カクテルの味を教えてくれたのがルパン。5517の方が広くてゆったり、お洒落。それに対してルパンは昭和の混沌を色濃く残すバー。あぁ、平成も20年をこえるというのに。
 
やってるかな。みゆき通りからのぞき込むと、本(モーリス・ルブラン著)の挿絵に登場しそうな怪盗紳士。薄暗い路地の看板、不敵な笑みを灯してます。
相変わらず入りにくいドアだ。あまりにふつう、店の気取りがありません。でも今日は丁度恰幅(かっぷく)のいい人が出てきて
 
《 いま席が空いたよ~ 》
 
と声をかけてくれました。それはラッキー、どうもです。
(^.^)
 


~ ルパン入り口 ~

 
細い階段を降りると賑やかな声。そのまま細長い店内へ。10人程しか座れないカウンター。座ってる人にぶつからないよう、気を付けながら奥へと進みます。ほぼ満員状態。
 
カウンタの終わり、角を曲がってこちら向いているのが太宰席。太宰治が酔っ払って、立て膝姿を撮られた席です。写真家、林忠彦は引いて引いて、トイレ入っちゃった状態で撮ったのだとか。
むむ、やっぱり座れないか、あの席は。今日は馴染みらしき、年配夫婦が座わってます。
1度だけ座れたのは初めてここに来た時。ビギナーズラックだったんだな、きっと。途中の空いてる席に。
 
少し暗いのは明かりのせいばかりではありません。掃除は行き届いていても、どうしようもない時の流れ。壁には幾年、客の声が染み付いて、もう取れないみたいです。
5517と飲み比べ。私はゴッドファーザーを、Kさんはバラライカを。
 
明日は大晦日。背広姿はなく、みなカジュアルな装い。会社に行けばそれなりの椅子に座ってそう、本当はどうかわかりませんが。
太宰席の夫婦、もう長いこと飲んでるのか。最後のオーダーは生卵を使ったカクテル。きつめのアレを使うらしいが一体・・・。
 
バーテンダーは白髪の紳士。
 
シャカシャカシャカ
 
細い体で素早く、そして無駄のない動き。そして大正時代のような髪形の女将さん。同じくバーテン服を着ています。この二人から溢れるの圧倒的な存在感。他の店員がアルバイトにみえます。
 
隣が空いて、初老の二人ずれが。
 
《 わたしんところが9位なのに、なんでトヨタさんのところが1位なんだ 》
 
なにやら熱く語り出す老人。どこかの企業の会長さんか・・・。
黙って聞いていた連れの人はアメリカの大学へ行った時の、誰々教授の説を静かに話し出しました。こちらも高齢の方なのに。
 
太宰席が空いたと思ったら、今度は若いカップルが。初めてのルパンなのか、目が戸惑ってます。やっぱりビギナーズラックか。リピーターを作る 店の宿命か。
 
入り口近くのおじさん二人はギターの話。今度は(井上)陽水に挑戦するらしい。
その手前には若い男。店を十分に予習、そのオーダーは熟考を重ねた末のよう、年配バーテンダーの技を盗みにきた同業者のようだとは、Kさんの考察です。
 
なんて密度の濃い空間。私もKさんも無口、二人ともレポートネタ、ブログネタを探して、目と耳が120%の稼働。でもこれではまったくグルメレポートにならない。そうそう、ゴッドファーザーの話をしなければ。
 
ゴッドファーザーはウイスキーベースのカクテル。名画《 ゴッドファーザー 》が流行った、1972年頃世に出たとか。レシピはウイスキーとアマレット。アル・パチーノの香りと甘み、マーロン・ブランドの濃厚、ニーノ・ロータ風の悲哀。ウイスキーをウォッカに変えると《 ゴッドマーザー 》、ブランデーに変えると《 フレンチ・コネクション 》になります。
 
ススッとグラスが目の前に。出し方も粋。一口飲んで、はっきり判るその違い。5517のが92点だとすれば、これは96点。円(まろ)やかさにもう一押し、伸びが加わってます。これを飲んじゃうと他はもう駄目。カクテルもやってますみたいな店のは60点以下だ! ただアルコール分を追加しただけのジュースに思えます。
 
バーテンダーの腕? それとも使っている酒自体、調合されてるものが違うのか。いや両方だな。ついつい目が白髪紳士の動きに。目にグラスを2~3並べ、氷を入れる。コーヒーについてくる、ちっちゃなミルク入れみたいなので調合。そして素早くシェイク。最短距離で最小限の力、でもスナップの利いた振りは、シェイカー自体の重みも利用。グラスの氷を捨て(おそらく氷はグラス自体を冷やすためだった)、慈しむように注ぐと、他にはない一杯の出来上がり。手品師のようだ。
 
ダイキリも注文。本物はどんな味なのか、前から気になっていたカクテルです。ラム酒にライムジュース、そしてスプーン一杯の砂糖。爽やかさと甘さ。でもそれに負けないラム酒、なんかドライ。これを飲めば、どの小説を読むよりもヘミングウェイのことがわかるかも。さすが、文士のバーです。
 
● さてそろそろ会計か・・・。カクテル3杯で5880円。ふたり分の夕食代になったな。これを高いと感じるか否か。う~ん、・・・やっぱり、高い。
(+。+)
 
( この記事は2009年01月12日に、東京つまみ食い に掲載したものです。)
 


 

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