なんて長いタイトル! 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか の感想です。

 

紹介

キューブリック監督、モノクロ映画最後の作品。
アメリカに帰化したナチス科学者 ストレインジラブ博士、真面目な大統領 マフリー、核攻撃を中止させようと静かに奮闘するイギリス人将校 ・・・・・をピーター・セラーズが怪演技、名演、熱演。
キューバ危機の後、1964年公開に公開されたブラックコメディ。本当に起こりそうで笑えない。
(^へ^;
 
 

感想

古いモノクロ映画だ言って馬鹿にしてはいけません。長い年月を経ても名を残している作品は特に。ましてやキューブリック監督の映画であればなおさら。考えられた設定、真似したくなる登場人物、ディテールに凝った小道具。どれをとっても面白い!
ヽ(^o^)丿

核ミサイル攻撃が他人事ではなくなった日本。今見るとそのブラックさがチクチクします。

気の触れたアメリカ空軍 リッパ―司令官は核による総攻撃を命令(R作戦)。指令を受けたB52戦略爆撃機34機はソ連領空に迫ります。水素爆弾の威力は広島の16倍。爆撃機の通信回路は特殊暗号装置に接続、交信を受け付けない状態に。領空侵犯まであと20分。

ことの重大さを認識したマフリー大統領は、ペンタゴンの作戦本部にソ連大使を呼び、ホットラインでソ連首相と会談。大統領はこう言います。

「 お願いだから、アメリカ軍機を撃墜してくれ 」

しかし、そこで驚くべき事実が明らかに。ソビエトには既に「世界のおしまい爆弾」が配備されており、基地が一ヵ所でも攻撃されれば、自動的に反応、爆発。死の雲がが地球を覆い、あらゆる生命が死に絶えることになる・・・。

というのがあらすじ。以下、面白かったシーンを上げていくと。
 


 
ベットに横たわる美女。あられもない姿、60年代にこんなホットパンツがあったのか・・・!(実は下着のもよう)

彼女はタージドソン将軍の秘書(愛人)。R作戦騒ぎの連絡が入るシーン。カメラアングルはほぼ固定、長回しで彼女を映します。これを間延びに感じさせないのがキューブリックの凄いところ。

ほかのシーン、例えば爆撃機の中では計器、スイッチ、モニターの操作をじっくり見せます。ディテールまで細かく作っているので、ゆっくり見ろとでも言うかのように。細々見るのに時間がかかりので、間延びに感じません。

鏡越し、スクリーン右からタージドソン将軍登場。大袈裟で感情豊か、本音をバンバン口にするタージドソン将軍。彼がいなければこの映画はただの暗い空想ドキュメンタリーになってたかも。
 


 
ペンタゴンの最高作戦会議室。状況を報告するタージドソン将軍。重い空気が漂います。そんな中

「 もう爆撃機を戻すのは無理だから、このまま攻撃しちゃいます? 」軽いノリのタージドソン将軍。

「 もう君はしゃべらなくていい 」呆れるマフリー大統領。

そこにソビエト大使到着。警戒する将軍。隠し撮りをする大使を取り押さえ、もみ合いになる将軍。子供の喧嘩だ。

「 作戦室で戦争は困る! 」とマフリー大統領。
(^。^)

その騒ぎを遮る声が

「 大統領、電話がつながりました 」ソ連首相?!

電話に視線が集まります。電話にでるマフリー大統領。たどたどしい挨拶、話が通じません。一度、大使と電話を替わります。一言二言話す大使、そして電話を大統領に返します。

「 用心なさい、彼は酔っている 」
(^^;

事態を説明するマフリー大統領。大使はそこで初めて、ことの重大さを知ります。横目で大統領を睨む大使。そして、会話が噛み合わない大統領と首相。言い争いになりそうなのを、持ちこたえる大統領。この辺はリアルなのか、コメディなのか。
(==)

ストレインジラブ博士、マフリー大統領、マンドレイク大佐。3役をこなしているピーター・セラーズ。演技が昨今のCGを越えています。台詞はほとんどアドリブだったというから驚き。ピンクパンサーだけじゃないんだ。

リッパー指令官の企みを知ったマンドレイク大佐は、なんとか司令官の暴走を止めようと奮闘します。何度か葉巻をくわえたリッパー司令官を、下から伺うカットが。印象的です。

子供が大人を見上げて、直観的に大人の嘘を見破る時よう。実は国を守る責任感と爆弾の恐怖の間で、心が押しつぶれたんじゃないかと想像させます。拷問が怖くて自殺しちゃうし。

マンドレイク大佐の活躍で、パスワードが判明。爆撃機は続々と引き換えします。しかし、コング少佐の機だけは戻りません。
(対空ミサイルの攻撃で通信機が故障したため)

爆弾の投下口も故障、コング少佐は爆弾に跨って修理。故障が直ると爆弾と共に落下していきます。

ヒャッホー!!

コング少佐役も初めはピーター・セラーズがやる予定だったとか。実現していたら、どんなアドリブを言ったか、興味深いところです。

結局、皆殺し爆弾が作動。人類は滅亡することに。でも映画はそのままは終わりません。ストレインジラブ博士が地下(炭鉱)に潜り生き残ることを提案。頭脳明晰な男性(政治家と軍関係者を優先)と性的魅力のある女性を選び、産めや増やせ。人類の復活を唱えます。
そして原爆、水爆が爆発するシーンが続いて映画は終わります。・・・ほんとはこの間にパイ投げシーンがあるらしいけど。

最後に心に残ったのは心配事だけ。

「北の将軍様がこの映画を観て、本物のお仕舞い爆弾を作らないといいけど」

考えてみるとどこの国でも作れそうです。世界のお仕舞爆弾。
ε~( ̄、 ̄;)ゞフー

台詞

感想でも紹介した「Gentlemen, you can’t fight in here! This is the War Room!(「作戦室で戦争は困る!」)」。実はアメリカ映画の名セリフベスト100の64位に選ばれているそうです。

アメリカの映画とかドラマでは、登場人物が洒落たジョークを言うけど、実社会でもそうなのかなぁ。
 


 

薀蓄

キューブリックが監督した最後の白黒作品である。本作品はピーター・ジョージ(英語版)の『破滅への二時間(英語版)』という真面目な内容の小説を原作にしているが、キューブリックはストーリー構成段階で題材の観念そのものが馬鹿げたものだと思い直し、ブラックコメディとしてアプローチし直した。
冒頭にアメリカ空軍により、「映画はフィクションであり、現実には起こりえない」との解説がつく。
ラストはヴェラ・リンが歌う第二次世界大戦時代の流行歌「また会いましょう」(en)の甘いメロディが流れる中、核爆発の映像が繰り返し流され、人類滅亡を暗示させるシーンで終わる。
撮影はロンドンのシェパートン・スタジオ(英語版)で行われたが、これは主演のセラーズが離婚協議中のためロンドンを離れられなかったためである。
最高作戦会議室のセットは、キューブリックが気に入った案を採用して作られた。アダムは40メートル×30メートル、高さ11メートルの三角形状の部屋を作成した。この形状は、最も爆発に耐性のある形状だとキューブリックが判断したものを基に設計している。部屋の奥には、フレッド・アステアの映画のダンスシーンに触発された黒い光沢のある壁に映し出される巨大な戦略地図が配置された。また、部屋のテーブルには緑のラシャが敷かれていた(白黒映画のため判別はできない)。これは、核戦争の危機を「世界の運命を決めるポーカー・ゲームのようなもの」として風刺する意図があった。
B-52の核攻撃仕様の内部構造は軍事機密であったためアメリカ国防総省の協力が得られず、B-29とB-52の写真を参考にコックピットを作り出した。アメリカ空軍幹部が撮影終了後にセットに招待された際、「それはCRMのような小さな黒い箱さえ、全て正確に作られていた」と述べたという。あまりにも正確なセットのため、キューブリックはアダムたち美術チームがFBIの捜査対象になるのではないかと心配したという。
セラーズはマフリー大統領、マンドレイク大佐、ストレンジラヴ博士の他にコング少佐を演じる予定だったが、彼は当初からコング少佐を演じることに消極的だった。演じる役が多過ぎることと、コング少佐のテキサス訛りを上手く表現できないことが理由だったという。キューブリックはセラーズに役を演じるように懇願し、脚本家でテキサス州出身のテリー・サザーンにテキサス訛りの台詞をテープに録音するように依頼した。セラーズはテープを聞いてテキサス訛りを習得して撮影に挑んだが、撮影中に足首を捻挫してしまい、狭いコックピット内に出入りすることが出来なくなり、コング少佐役を降板した。セラーズが演じた役の台詞は、大半がアドリブだったと言われている。

 


 

資料

原題:Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb
コピー:-
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック、ピーター・ジョージ、テリー・サザーン
原作:ピーター・ジョージ『破滅への二時間(英語版)』
制作:スタンリー・キューブリック、ヴィクター・リンドン
出演:ピーター・セラーズ、ジョージ・C・スコット
音楽:ローリー・ジョンソン
主題歌:「また会いましょう」ヴェラ・リン
撮影:ギルバート・テイラー
編集:アンソニー・ハーヴェイ

ストレンジラヴ博士 / ピーター・セラーズ
ジャック・D・リッパー准将 / スターリング・ヘイドン
バック・タージドソン将軍 / ジョージ・C・スコット
ライオネル・マンドレイク大佐 / ピーター・セラーズ
マーキン・マフリー大統領 / ピーター・セラーズ
T・J・“キング”・コング少佐 / スリム・ピケンズ

製作会社:ホーク・フィルム
配給:コロンビア映画
公開:1964年10月6日
上映時間:93分
製作国:イギリス、アメリカ合衆国
言語:英語、ロシア語

制作費:$1,800,000

博士の異常な愛情 予告編 – YouTube


   1960年代日本公開の映画一覧はこちら(作成中)   

 
 

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参考・引用

博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか – Wikipedia
映画『博士の異常な愛情』解説(ネタバレあり)名作映画を観よう!第3回 – NO TITLE
【考察・検証】『博士の異常な愛情』は誤訳か意訳か : KUBRICK.blog.jp|スタンリー・キューブリック
映画 博士の異常な愛情(1964) 笑える?核戦争を描いています – ザ・競馬予想(儲かるかも?)
『博士の異常な愛情』の幻のパイ投げシーン

更新履歴

初出)2018年06月14日、シネマドローム